研究課題
【平成30年4月1日~9月1日】まず申請時点から採用までの準備中に行った研究を2本論文化し、Clinical Breast CancerとAnticancer Researchへ発表した。また、国際学会で1回、国内学会で4回発表した。研究課題については、エフェクターT細胞の活性化に関与する転写因子T-betに着目し、その機能的意義を検討した。この研究成果は、平成30年12月の 41th San Antonio Breast Cancer Symposium 2018で発表し現在Breast Cancer Reserch and Treatmentに投稿中である。【平成30年9月2日~平成31年3月31日】平成30年9月からは、アメリカ合衆国カルフォルニア州にあるBeckman Research Institute of City of Hope, Cancer Biology分野のShiuan Chen教授の研究室へ渡り、研究を継続している。PDXモデルおよび腫瘍から作成したオルガノイドを用いて、再発TNBCおよびホルモン療法耐性乳癌のメカニズム解明に努め、Translational researchにも注力している。こちらでは、1) E2がホルモン療法耐性乳癌の発育を抑制するメカニズムの解明、および、2) ホルモン療法耐性乳癌の中からエストロゲン療法が有用である群を特定するバイオマーカーの特定を目的とし、研究を開始した。またこの一年間で以下の賞を受賞した。1、平成30年度福岡県すこやか健康事業団がん研究助成金奨励賞受賞(2018年12月)2、平成30年度九州大学若手女性研究者・女子大学院生優秀研究者賞最優秀賞受賞(2018年9月)3、第26回日本乳癌学会学術総会Excellent Presentation Award受賞(2018年6月)
2: おおむね順調に進展している
申請時点から採用までの準備中に行った研究を論文化し公表した。まず2005年1月~2014年12月までに当院で手術した原発性乳癌910例のうち、BRCAnessが高いと考えられるトリプルネガティブ乳癌(TNBC)77例または若年性乳癌(40歳以下と定義)55例の計124例を対象とし、生殖細胞系列におけるBRCA1/2変異を、乳癌体細胞より得られた情報からBRCAnessとして予測し、家族歴との関係を検討した。TNBCまたは若年性乳癌では乳癌全般と比較し家族歴を有する割合が多く、BRCAnessと家族歴は両者の予後不良因子となった。丁寧な家族歴の聴取と乳癌体細胞を用いたBRCAnessの測定により、BRCA遺伝子変異ハイリスク群を推定することが可能になると考えられた。TNBCの治療に用いられるdose-denseAC療法に関する研究では、持続型G-CSF製剤を2週毎に投与した場合の血中G-CSF濃度に関する本邦のデータはないため、Pegfilgrastimを2週毎または3週毎に予防投与した症例を検討し、Pegfilgrastimを併用することによりdose-denseAC療法を安全に完遂できることが示された。研究課題については、2005年~2014年までに手術をした原発性乳癌のうち、術前化学療法症例を除くTNBC248例を対象とし、免疫組織化学染色によりT-betおよびCD8発現を評価し、既存の治療(化学療法)・予後データを用いて解析した。TNBCの微小環境において、T細胞の転写因子T-bet発現とCD8発現には正の相関があった。TNBCにおいてT-bet発現が高く、転写活性の高いリンパ球が多い腫瘍は、腫瘍径が小さく、予後良好の可能性があった。腫瘍免疫活性化の機能的指標としてT-bet発現が有用である可能性が示唆された。
アメリカ合衆国カルフォルニア州にあるBeckman Research Institute of City of Hope, Cancer Biology分野のShiuan Chen教授の研究室で新たな課題をみつけたため、計画を追加する。ホルモン療法耐性乳癌は、ホルモン療法が効かなくなっており、私の研究課題であるトリプルネガティブ乳癌と共通点がみられる。ホルモン療法耐性乳癌に対し、1) E2がホルモン療法耐性乳癌の発育を抑制するメカニズムの解明、および、2) ホルモン療法耐性乳癌の中からエストロゲン療法が有用である群を特定するバイオマーカーの特定を目的とする。当研究室では、このE2投与の治療効果がみられるホルモン療法耐性PDXモデルを確立した。このPDXモデルに対しE2ペレット・ジヒドロテストステロン(DHT)ペレット・プラセボペレットを移植し、治療1週間後の腫瘍および血清を回収した。まず、腫瘍のRNAシークエンスを行い、治療により変化が見られた遺伝子に関しては、免疫組織化学染色、ウエスタンブロット、qPCRによりタンパクレベル・RNAレベルで解析中である。さらに今後は、シングルセル解析を予定している。癌組織は、非常に不均一な組織である。腫瘍組織から5000個ほどの単一細胞を分離し、個々の細胞の遺伝子変化を捉えることで、集団細胞の平均的なデータでは不明瞭な部分を明らかにしたいと考えている。また、腫瘍から作成したオルガノイドに対しても薬剤試験を行い、in vitroのデータも解析中である。ここまでの研究内容は、令和元年12月の 42th San Antonio Breast Cancer Symposium 2019で発表する予定である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
Clinical Breast Cancer.
巻: 18 ページ: e1217-27
10.1016/j.clbc.2018.05.008
Anticancer Research.
巻: 38 ページ: 4381-4386
10.21873/anticanres.12740
Anticancer Research
巻: 38 ページ: 4273-4279
10.21873/anticanres.12724