研究課題/領域番号 |
18J20386
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
金木 奨太 北海道大学, 大学院情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | GaN / MOS / 界面準位 |
研究実績の概要 |
本年度の主目標は、高品質GaN上に形成したMOSダイオードのPost Metallization Annealing(PMA)効果を詳細に評価することである。窒素雰囲気中300-400℃でPMA処理を行うことで界面準位密度が1桁以上低減し、1Hzから1MHzと広い周波数範囲においても分散の見られない極めて良好なC-V特性が得られた。また、c面GaN に形成したMOS構造断面を高解像度透過電子顕微鏡(HRTEM)で観測し、Geometric Phase Analysis (GPA)解析を適用することによって、PMA前ではAl2O3/GaN界面においてGaNの格子定数が不均一に分布していることが明らかとなった。PMA処理を行うことで界面近傍の格子定数分布が均一になることが確認でき、GaNの表面付近に存在している欠陥やボンド乱れがPMA処理により回復したことを示唆する結果を得た。また、c面GaNに形成した MOSダイオードでは、しきい値電圧の温度依存性が明確に観測された。焦電効果によってGaNの有する自発分極が温度上昇に伴い変化したと考えられる。一方、無極性面であるm面GaN上のMOSダイオードでは、しきい値電圧の温度依存性は観測されず、安定動作の観点から重要な結果である。以上、絶縁ゲート型GaNトランジスタの動作安定性向上に関して、重要な知見を得ることができたと判断できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
m面GaN基板上にn-GaNをエピタキシャル成長させた試料が入手できたため、いままでほとんど評価されることのなかったm面GaN上MOS構造の界面特性を明らかにできた。PMA処理を行うことでc面GaN上MOSダイオードと同様にC-V特性が理想値に非常に近い良好な結果を示し、界面準位密度はc面GaN MOSダイオードと同程度であった。一方でPMA を行っていない試料においてはc 面GaN MOS ダイオードと比較して低界面準位密度であった。最表面にGa とN が共に存在するため、Ga-N ダイマーを均一に形成したことで界面準位が低密度に抑えられている可能性が考えられるが、詳細については今後詳しい研究が必要である。 また、両者の温度依存性を比較することによってc面GaNにおいてしきい値電圧の温度依存性が明確に観られ、極性面において焦電効果によってGaNの有する自発分極が温度上昇に伴い増強されたものであると考えられ、、c 面GaN 上にデバイスを作製した場合、しきい値電圧の温度依存性が本質的に出現することを示した極めて重要な結果である。
|
今後の研究の推進方策 |
m面GaN上MOS構造についても高解像度透過電子顕微鏡(HRTEM)像のGeometric Phase Analysis(GPA)解析を行うほか、従来の方針の沿ってPMAによる界面特性回復のメカニズム解明に向けて異なる測定法を用いた界面状態の観測などを行う。 また、c面、m面GaNでは、MOS構造だけでなくショットキーバリアダイオードにおいても障壁高さが異なる等の報告が多数存在しており、物性的特徴が結晶面に大きく依存していることから表面の結晶構造や焦電効果の有無が電気的特性に与える影響についてより詳細な研究を行う。
|