本年度は、m 面 GaN MOS 界面特性について詳細に評価し、学術論文の投稿を行った。[000-1]方向へ 5 度傾斜させた基板上に結晶成長した m 面 GaN 上に、原子層堆積法(ALD)により Al2O3膜を堆積して MOS 構造を作製した。容量-電圧(C-V)評価の結果、未処理試料であるにも関わらず、Al2O3/m 面GaN 界面の準位密度は 3×1011 cm-2eV-1以下となり、c 面 GaN MOS 構造よりも明らかに低い準位密度を示した。いくつかの第一原理計算は、m 面 GaN 表面では Ga-N ダイマーが安定に形成される可能性を示しており、これに基づき、Ga-N ダイマー形成→ALD プロセスでのダイマー分断→分断されたボンドの酸素終端→連続的なAl2O3膜形成という表面モデルを提案した。さらに m 面 GaN MOS 構造の高温での安定性を評価し、200℃においても、周波数分散のない C-V 特性と 10-9 A/cm2オーダーの低リーク 電流を確認した。これらの結果は、m 面 GaN をチャネルとした MOS トランジスタの高い安定動作を示唆している。以上、絶縁ゲート型 GaN トランジスタの動作安定性向上に関して、重要な知見を得ることができたと判断できる。
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