研究課題/領域番号 |
18J20387
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 亮秀 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 酸化物/貴金属ヘテロ接合触媒 / Au@NiOコアシェル触媒 / 密度汎関数理論 |
研究実績の概要 |
酸化物と貴金属が接合した構造を持つ物質は単一材料で成し得ない得意な性質を発現する。AuをNiOで包み込んだNiO/Auコアシェル触媒はそのような触媒の一つであり、空気酸化による直接酸化エステル化でメタクリル酸メチルを合成するという他に類を見ない反応を触媒する。本触媒を用いた反応では選択率が良く、溶媒が酸化されにくいことが知られている。 この触媒は表面のNiOが通常よりも酸素過剰になっているとされており、この酸素過剰状態が重要という事は知られているが、なぜ酸素過剰になるのか、なぜ酸素過剰状態が良いのかは知られておらず、学問的な観点からも、他の触媒への応用という観点からも、本触媒の酸素過剰状態の原因と役割に興味が持たれた。 本研究においては密度汎関数理論を用いた理論計算を行い、 (1)触媒表面のNiOは接合したAuとの間の反結合性軌道から電子を受け取るために高い酸化数を持つ酸素過剰状態が安定化されることを解明した。(2)NiOの酸素過剰状態としてNi欠損が考えられるが、Ni欠損は触媒の塩基点の強度上昇に寄与し、反応の活性化障壁を下げる役割があることを反応経路計算より確認した。また、本触媒には酸素が吸着しやすく、触媒の活性向上に寄与していることを確認した。(3)本触媒上において基質が酸化され、溶媒が酸化されない理由を検討するため、基質と溶媒を酸化する反応経路計算を行い、エネルギーダイアグラムの観点から検討した。(4)NiO/Au以外の組み合わせでNiO/Auと同じ酸化されやすさを持つ系を探索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本テーマにおいては NiO/Au コアシェル触媒上で起こる反応に関して、スラブモデルを用い、DFT 計算による研究を行った。 本年度は、NiO 中に Ni 欠陥がある場合とない場合について基質を酸化する反応の反応経路計算を行い、NiO への酸素吸着や Ni 欠損欠陥が触媒反応に寄与しているという作業仮説を検証し、本年度および次年度に跨って溶媒であるメタノールの酸化反応を計算し、何故本触媒においてメタノールが酸化されにくいのかを検証する予定であった。 さらに次年度は NiO/Au と同様の酸化されやすさを持つ系を探す予定であった。 現時点において基質の酸化反応経路計算及び、溶媒の反応経路計算の両方の計算がほとんど完了に近い所 まで進行している。また、NiO/Au と同様の酸化されやすさを持つ系の探索も手掛けており、当初予定して いた進捗よりも少し進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度において反応機構計算の内の大部分と、溶媒が酸化されない理由を探るための反応機構計算の大部分を行なったが、まだ完了していない 計算も残っている。 本年度はこの反応機構計算の残りを行う。また、前年度に引き続き,酸化されやすい組み合わせの触媒の探索を行う。
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