研究課題/領域番号 |
18J20441
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山岸 敦 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 政府間競争 / 地方分権 / ポピュリズム / Tiebout / 租税競争 / 最低賃金 |
研究実績の概要 |
本年度は主に複数の政府が分権的な状況の下政策を遂行する状況について理論、実証の両面から研究し、以下のような成果を得た。
(1) 政府間の政策競争に関して、複数の理論的研究を行った。まず、政府が資本税率および環境規制に関して企業の誘致合戦を行う状況での経済の効率性および環境政策の国際協調の必要性に関して論じた論文がCanadian Journal of Economicsに掲載決定している。加えて、政府間競争に関連する複数の論文をSSRNで公開した。第一の論文では、TieboutモデルのTiebout Sortingメカニズムは租税競争による資源配分の歪みを緩和することを示した。第二の論文では、近年Populismと形容されるような「有権者から人気はあるが望ましくない政策」が政府間で伝播してしまう可能性を示し、分権的な政策決定が民主主義の性能を落としてしまう可能性を示した。
(2) 上記(1)のグループの研究と関連して、地方分権的に決定ないし遂行される政策として最低賃金政策に着目し、以下の2つの論文をSSRN上で公開した。第一に、地域別最低賃金上昇はアパートの賃料への影響を招き労働者の負担に影響を与え、さらにこの影響は最低賃金が労働者にとって望ましい政策かどうかの指標となることを明らかにした。さらに、日本のデータを用いて実証分析を行い、最低賃金上昇は少なくともあるグループの労働者にとっては望ましかったものの、アパート賃料の上昇を招いており、労働者の支出増を引き起こしている可能性を示した。第二に、米国やEUで見られるように最低賃金の水準が分権的に決定されている状況を理論的に分析した。このような状況では人々の移住行動によって最低賃金政策の正しいコストを地方政府は考慮せず、結果として分権的な意思決定の下では最低賃金水準が望ましくないほどに高くなる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
政府間で政策のインタラクションについて、より一般には地方分権的に決定される政策について、複数の成果を論文の形でまとめることができた。特に、税と環境規制を用いた政府間競争に関する論文が定評ある国際査読誌に掲載されるなど、国際的にもインパクトのある成果を挙げることができた。さらに、複数の公刊可能だと思われる論文の原稿を仕上げており、期待以上の進展であると考えられる。ただし、個別具体的な政策課題に関する研究成果が多く生まれた一方で、より抽象的な理論の構築に関しては期待以上の成果が挙げられたとは言い切れず、今後はより抽象的な理論構築とその検証も望まれる。
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今後の研究の推進方策 |
前年までにまとめた論文(ワーキングペーパー)を発展させ、国際査読誌に公刊することを第一の目標とする。とりわけ2つの論点に関して集中的に分析したい。第一に、TieboutモデルとZodrow and Mieszkowskiモデルを融合させたフレームワークについては一応の理論的枠組みは完成しているものの解析的なインプリケーションは限定的であることがわかったので、定量的な評価を行うための方策を探る。第二に、最低賃金の住宅家賃への影響について、日本のデータだけではなくアメリカのデータを用いた検証を行い、日本との比較検討を行う。
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