前年度は、2017年10月にALMA望遠鏡で観測された銀河系中心の230 GHz帯データの解析を行い、銀河系中心の超大質量ブラックホールSgr A*が数十分程度の短い時間スケールの光度変動を呈することなどを発見した。これは、降着円盤の内縁付近という超大質量ブラックホールから極めて近い領域で光度変動が生じた可能性があるという重要な発見であり、論文・学会発表を行った。本年度は本成果についてプレスリリースを行い、いくつかの新聞や、国内外の多くのwebメディアに記事が掲載された。また、国内の談話会や研究会で本成果の発表を行った。 また2020年1月には、銀河系中心部の高速度コンパクト雲CO 0.02-0.02のALMA Cycle7での観測が実施された。最も角度分解能の高い12 mアレイの観測は気象条件やCOVID-19の影響により完全な要求通りとはいかなかったものの、取得されたデータを今年度受け取った。このデータついて解析を行い、一酸化炭素やシアン化水素などの分子スペクトル線と電波連続波のイメージングについて完了した。これにより、詳細な分子ガス等の空間・速度分布の把握が可能となり、超大質量ブラックホール形成に重要な、中質量ブラックホールや高密度星団の間接的証拠が得られる可能性がある。現在はこれまでに実施してきたラインサーベイなどの単一鏡観測の結果を含めた知見をまとめており、CO 0.02-0.02の運動状態やその形成過程について提案する論文を準備中である。 これらの他にも、孤立ブラックホールと関係する可能性がある銀河系円盤部における広い速度幅を持つ分子雲の探査や、星団が付随する可能性がある銀河系中心領域におけるスーパーバブル候補天体について、共同研究として論文発表を行った。
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