研究課題/領域番号 |
18J20516
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
芳田 泰基 北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 超音波 / レオロジー / 計測手法 |
研究実績の概要 |
新材料開発の現場では,数世紀を超えて体系化されてきた古典流体力学が通用しない.特殊な物性を機能的に利用する産業分野で叫ばれる共通認識である.発端は,非ニュートン流体の挙動がリアルタイムで予測できないことにある.必要となっている技術は,多種多様な物性に由来する熱流動挙動を一括して把握できる道具である.計測対象とする流体に制限を設けないレオメトリの開発,それが本研究の唯一かつ最終の目的である.具体的手段は,二次元流速分布計測を用いたインラインレオメトリに集約される.インラインレオメトリの開発に先駆けて,非ニュートン性流体に適用可能な回転式超音波レオメトリ(USR)の開発を進めている.流速情報からUSRの完成は,同じく流速計測手法ベースで開発を想定している本研究課題の解決に直結する.主要なアルゴリズムとしては,流体に伝播する運動量の位相差と実効粘性の相関関係からレオロジー物性を取得できる.この手法をチキソトロピー性流体に適用し,分散粒子構造とレオロジー物性の間に新たな知見が得られた.これはApplied Clay Science にて2018 年初旬に公表されている<7.(1)-1>.しかしながら,流速位相差を用いる本アルゴリズムは流体のレオロジー物性を実効粘性としてしか評価することができない.実効粘性のみならず,粘性・弾性を同時に評価するために,線形粘弾性解析手法を考案・実装し,Rheologica Acta に2018年初旬に研究成果を公表している<7.(1)-2>.同手法の妥当性検証を兼ねて,広島大学の研究施設を借り,実験を2018 年6 月に行った.広島大学において取得した結果と比較・妥当性評価し,新たに得られた成果をJournal of Rheologyへ論文を投稿し,採択済みで,2019年中に公表される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況を順調であると判断する理由としては,下記が挙げられる.①ラボレベルでのパイプラインの構築と基礎実験済みである.②スイス連邦工科大学との共同研究にて,本研究を加速させる段階にある.③粘土科学分野における有力な国際誌への論文掲載済み.④レオロジー分野における有力な国際誌へ論文掲載済み.⑤北海道大学農学研究院との共同研究結果として,国際誌への論文掲載済み.⑥一般社団法人 可視化情報学会から学会賞を受賞. 上記を要約するに,現在まで国際ジャーナル:4件,国際会議:5件,国内会議:5件の研究公表がある.次年度中に,国際ジャーナル5件,国際会議2件の公表予定があり,さらなる研究の発展を考えている.
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今後の研究の推進方策 |
これまで確立した理論を発展させ,パイプラインを用いた新たなレオメトリの研究開発を想定している.これに向けた具体的な予定としては,パイプラインユニットを構築し,稼働実験を行う.完成し次第,解析手法を逐次,考案・実装していく.この開発研究には,国際共同研究を想定している.具体的にはスイス連邦工科大学(ETHZ)へ4か月間渡航し,パイロットプラント規模の装置を用いた実験を行う(平成31 年度JSPS:若手研究者海外挑戦プログラムに採択済み).これは,即時産業応用可能なツールの研究開発である.非ニュートン性流体の挙動について,食品レオロジーを専門的に研究対象としているETHZの専門家と議論を交える.上記計画を通して構成した計測システム,及び二次流れデータベースをもとに,インラインレオメトリの解析ユニットを構築する.導入 する手法としては,① 得られた速度・圧力場情報をもとに,非ニュートン性を考慮したモデル式を与え,近似的に物性を評価 ② 二次流れにおける固有振動的な応答に周波数解析を用いることによって,その非ニュートン的性質を評価 ③ 流速分布の高次モーメント変化と非ニュートン性との相関の三つを想定している.
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