研究課題
昨年度は、本研究の主たる対象である単独中性子星、RX J1856.5-3754(J1856)について、ISS搭載のX線望遠鏡 “Neutron star Interior Composition ExploreR” (NICER) による合計 200キロ秒の観測を行った。この観測データについて、較正の不定性も含めた詳細なスペクトル/タイミング解析を行った。結果、これまで知られていなかったスペクトル中の吸収線を発見した。この吸収線の起源は陽子によるサイクロトロン共鳴散乱と考えられ、吸収線の波長から磁場を求められる。また、中性子星の磁場は自転パラメータからも求められる。報告者は、吸収線と自転の二つの方法で求めた磁場の差から磁場の幾何学を制限する方法を発案し、J1856とこれまでに解析した他の単独中性子星に対して適用した。結果、従来は難しいとされていた中性子星の自転軸と磁軸のずれを初めて系統的に制限した。また、J1856の自転周期は従来7.055秒であるとされていたが、実際は14.11秒である可能性を示唆した。さらに、J1856を含む単独中性子星7天体について、星表面に温度勾配が存在することを発見した。その起源は、他の中性子星種族と比較することで、強磁場による表層の熱伝導率の非等方性に由来することを示した。以上の内容は報告者の博士論文として出版した。しかし、令和3年5月3日現在、DOI等の付与はまだ行われていない。更に、日本の次期天文衛星であるX線分光撮像衛星(XRISM)搭載の軟X線撮像システム”Xtend”の検出器開発に携わり、CCD素子のフライトモデル品選定及び地上較正実験を主導した。その内容は論文2編として出版した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
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Proceedings of the SPIE
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