研究実績の概要 |
本研究の目的は、種々のカチオン重合性モノマーを用いて分子量、立体規則性、形を同時に制御したポリマーの合成法を確立し、多様な機能性高分子材料の開発を可能にすることである。これまでにN-ビニルカルバゾール(NVC)の立体特異性リビングカチオン重合系を見出し、立体制御の鍵は生長カチオンと対アニオンの相互作用であることを示してきた。2018年度は主に、この重合系を基盤としてNVC以外の構造を有するモノマーを用いた検討を行うことで、モノマー構造がポリマーの立体規則性に与える影響を調べることを目指した。具体的には、(1) 置換NVC類 (2)ビニルエーテル(VE)類のカチオン重合について検討を行った。 (1) NVCの3,6位に種々の置換基(tBu, Me, Br, Cl, hexanoyl等)を導入したモノマーを合成した。これらのモノマーについてCF3SO3H/nBu4NCl/ZnCl2(またはSnCl4)系を用いて重合を検討したところ、置換基によって立体規則性が大きく変化することがわかった。この結果から、NVCの3,6位の置換基の性質、とくに電子的な性質が立体規則性に大きな影響を与えることが明らかとなり、カチオン重合の立体制御においては立体的なかさ高さだけでなく電子的な要因が重要であることが示唆された。 (2) 次に、種々の構造を有するVEの合成を行い、立体制御の可能性を検討した。まず、iBuVE、iPrVEなどのアルキルVEについてCF3SO3H/nBu4NCl/SnCl4系で重合を検討したところ、濃度比などの条件によらず立体規則性は高くなかった。一方BnVEの場合、SnCl4と nBu4NCl の濃度比に応じて立体規則性の明確な変化が見られた。これはNVCを用いた場合と同様の傾向であり、さらに他の実験においてもPBnVEの立体規則性の変化はPNVCの場合と類似の傾向を示した。
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