研究実績の概要 |
心臓型脂肪酸結合タンパク質 (FABP3) 欠損マウスでは不安行動と探索行動異常が認められるが、この行動障害には前帯状皮質における GABA 合成や伝達の異常を伴うことを共同研究グループが報告した (Yamamoto et al., 2018)。FABP3 はドパミン D2 受容体 (D2R) のロングアイソフォーム D2L 受容体 (D2LR) と相互作用することから、D2LR 欠損マウスおよび D2R 欠損マウスにおける情動行動を解析した。その結果、これらのマウスは野生型マウスと比較してストレスに脆弱であり、その原因としてセロトニン神経系の制御異常があることが明らかとなった (Shioda et al., 2019)。心的外傷後ストレス障害を発症した患者の多くが発症後に不安やうつを併発することから、当該疾患の発症メカニズムのひとつとして D2L 受容体を介した神経障害が考えられる。また、心的外傷後ストレス障害の患者においても前帯状皮質における神経活動異常が報告されている。以上のことから、心的外傷後ストレス障害のモデルマウスとして報告 (Yabuki et al., 2018) した FABP3 欠損マウスを用いて、前帯状皮質をはじめとした情動行動を制御する脳領域においてどのようなストレス関連分子が変動しているか探索することで、心的外傷後ストレス障害の神経発症メカニズムの解明につながると考えられる。
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