研究課題/領域番号 |
18J20672
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
畠中 惇至 同志社大学, 生命医科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 転写制御 / トランクスリプトーム解析 / 恒常性 / オートファジー |
研究実績の概要 |
サルコペニアとは加齢に伴って筋肉量が減少する疾患であり、その発症による身体機能の低下がさらに筋肉量を減少させるという悪循環に陥る。つまりサルコペニアの克服のためには、発症初期に筋肉量の減少をいかに抑えるかが重要なポイントである。しかしながら、サルコペニアの発症機構の詳細は未だ明らかにされておらず、さらには研究に有用なモデルマウスも少ないのが現状である。そのような現状において、申請者が作製した骨格筋特異的Nrf1ノックアウト(Nrf1MKO)マウスはサルコペニア様病態を呈することを明らかにした。さらにその後の解析から、(1)Nrf1が既報のプロテアソーム構成遺伝子以外にも、細胞の恒常性維持に関わる遺伝子を制御していること、(2)その中でもNrf1が選択的オートファジーを介してミトコンドリア恒常性に関わると考えられているGABARAPL1遺伝子の発現制御を行っていることを明らかにしてきた。そこで本研究では、Nrf1とサルコペニアとの関連を、選択的オートファジーの面から明らかにすることを目的とする。2019年度は以下の2点について解析し、明らかにすることができた。 (1)Nrf1によるミトコンドリア恒常性維持機構についての精査 前年度までにNrf1がミトコンドリア恒常性に関与すると考えられているGABARAPL1を制御することを明らかにしたので、2019年度はその発現制御が機能的であるかを検証したが、思うような結果は得られなかった。そこで、ミトコンドリアに限らず選択的オートファジー制御に範囲を広げ、下記を解析し明らかにした。 (2)Nrf1による選択的オートファジー制御の可能性 前年度に行ったNrf1の標的遺伝子を同定するトランスクリプトーム解析から、選択的オートファジーに関わるp62およびTBK1に着目した。詳細な解析から、これらの遺伝子はNrf1の標的遺伝子であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)Nrf1によるミトコンドリア恒常性維持機構についての精査 前年度までにNrf1がミトコンドリア恒常性に関与すると考えられているGABARAPL1を制御することを明らかにしたので、2019年度はその発現制御が機能的であるかを検証した。まず、mCherry、EGFP、ミトコンドリア局在化シグナルを通するFIS1のC末端の3遺伝子を融合したプローブを作製した。細胞質中のpHではmCherryとEGFPともに発光するが、リソソーム中の低pH環境ではEGFPが消光してmCherryのみが発光する。これにより、ミトコンドリアがどの程度リソソームに送られているか、つまりミトコンドリアが選択的オートファジー(マイトファジー)による分解を受けているかを評価することが可能となる。このプローブを安定発現させた細胞を樹立し、ミトコンドリア性状の解析を試みた。しかしながら、Nrf1とマイトファジーを関連づける結果は得られなかった。そこで、ミトコンドリアに限らず選択的オートファジー制御に範囲を広げ、下記を解析し明らかにした。 (2)Nrf1による選択的オートファジー制御の可能性 前年度に行ったNrf1の標的遺伝子を同定するトランスクリプトーム解析から、選択的オートファジーに関わる遺伝子に着目した。これら因子の発現制御を介して、Nrf1が選択的オートファジーの活性化に関与していることが示唆される。そこで、ChIP-qPCR解析およびsiRNAを用いてNrf1をノックダウンした際の発現変動を確認したところ、Nrf1がこれら遺伝子の発現を活性化させていることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
(1)Nrf1による選択的オートファジー制御の精査 すでにNrf1が選択的オートファジーを活性化している可能性を、分子メカニズムレベルで見出している。そこで今後は、Nrf1が選択的オートファジーを活性化していることをさらに精査する。具体的には(1)Nrf1が活性化するプロテアソーム阻害時に、Nrf1依存的にオートファジーが活性化することを分子メカニズムレベルで確認する、(2)オートファジーによる分解をモニターすることができるプローブを使った実験系で解明する。解析に使用するプローブは、共同研究先ですでに構築済みである。 (2)論文発表 (1)の解析を行いながら、これまでの結果を論文としてまとめ、最終的に英文国際誌に投稿する。さらに、査読後のリバイス実験・論文の修正を行って英文国際誌への掲載を達成することで、研究成果を社会へ還元する。
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