研究課題/領域番号 |
18J20698
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
五十嵐 未来 東北大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | マーケティングモデル / ベイズ統計 / 消費者行動論 / ソーシャルメディア / 深層学習 / 社会ネットワーク分析 / ユーザー生成コンテンツ / 自然言語処理 |
研究実績の概要 |
本年度は、主に社会ネットワークモデルの構築に取り組んだ。本研究の最終的な目的は、消費者同士のコミュニケーションが互いの消費行動に与える影響を明らかにすることであるが、消費行動への影響を考える前に、消費者同士のコミュニケーションがどのようなメカニズムで行われているかを明らかにする必要がある。このメカニズム解明に向けて、社会ネットワークモデルの観点から、ソーシャルメディアなどが発達した現代のネットワークに即した確率モデルの構築を目指した。 「社会ネットワーク上のある個人と別な個人とが、(友人や同僚など)何らかの関係性を持っている」という現象をモデル化することに対して、伝統的なネットワークモデルのアプローチでは、どのようなコミュニティに所属しているかに依ってのみ確率が変化するという仮定を置いていた。しかし、現代のソーシャルメディアに代表されるようなネットワークでは、そのような所属コミュニティだけでなく、自分が、そして相手がどのような興味を持っているのかということも両者の関係性が決定するプロセスに影響していると考えられる。そこで本研究では、人々の興味や関心が反映されているTwitterの投稿文やブログなどのユーザー生成テキストの影響も組み込み、ネットワーク情報とテキスト情報の両方を考慮した社会ネットワークモデルを提案した。そして、提案モデルの有効性を示すために、複数のシミュレーション実験を行うとともに、Twitterデータを用いた実証分析によって実データへの応用例も示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画の通り、研究課題の最終的な目的を達成するための前段階として位置づけられる、消費者間の社会ネットワーク構造に関して、現代の状況に即した新たなモデルを提案した。また、その研究成果を学会や研究会等で発表し、本研究の進捗を研究者コミュニティに対して周知するとともに、その場で行われた有意義な議論を通して本研究の課題と解決に向けた道筋が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で提案した社会ネットワークモデルは、「ある個人」と「別の個人」のネットワーク上の「関係性」を確率モデルとしてあらわしたものであるが、別の個人を「商品」に、関係性を「購買行動」に置き換えることで、マーケティングモデルに応用することが出来る。伝統的なマーケティングモデルでは、様々な変数が購買行動に与える単独の影響、あるいは相互作用を考慮したとしても限定的な影響しかとらえられなかったのに対して、本研究のように、「消費者と商品の関係性」という同じデータ構造に対するモデルでありながらそれをネットワークとして捉えることで、消費者同士、あるいは商品同士の複雑に絡み合う影響を分析することが可能となる。さらに、そのようなネットワーク構造に対するモデルは、本研究のもう一つの特徴である深層学習とも親和性が高く、近年様々なネットワークに対する深層学習の研究が報告されている。本研究では、今年度の成果である社会ネットワークモデルをマーケティングモデルとして昇華させること、及び深層学習の近年の成果を応用して大規模データの分析、変数同士の複雑な影響の捕捉が可能なモデルの構築を目指していく。
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