本年度は、課題研究の最終年度であり、これまでの成果をまとめて学術誌に研究論文として投稿するとともに、海外発表も精力的に行い、研究成果の周知に努めた。 まず、前年度までに取り組んでいた、ソーシャルメディア上のテキスト情報を考慮した社会ネットワークモデルの研究に関して学術論文にまとめ、国際統計誌に投稿した。そこで行った、シミュレーション実験によるモデルの正当性の検証と実データを用いた実証分析が高く評価され、受理されるに至った。また、本論文で残された課題として、ノード次数の異質性を考慮したモデリングにも取り組み、新たなシミュレーション実験と共にアップデートした実証分析の結果をまとめ、国内の統計誌に投稿、改訂を経て受理された。 また、ネットワーク分析モデル以外のプロジェクトとしては、前年度より続いているカスタマーレビュー分析の研究を行った。まず一つ目に取り組んだものは、教師ありトピックモデルの解釈性向上に取り組んだ研究である。カスタマーレビューを分析するにあたって、教師ありトピックモデルは強力なツールとなっているが、必ずしも推定結果から得られるトピックが解釈可能であるという保証はない。そこで、本研究では、製品属性を代表する単語にラベルを事前に割り振り、そのラベルをモデルの推定に反映させることでトピック解釈性能の向上に取り組んだ。この成果は、ワーキングペーパーとして公開されており、現在投稿準備を進めている。 さらに、上述した教師ありトピックモデルによるカスタマーレビュー分析モデルと、機械学習においてテキストデータの分析手法として多くの成功事例を収めている単語埋め込みモデルを組み合わせた新しいマーケティングモデルの開発にも取り組んだ。本研究については、まだ残された課題もあるものの、分析モデルの定式化と推定手法の導出、及び実証データに対する分析例をワーキングペーパーにまとめて公開している。
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