研究課題/領域番号 |
18J20706
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
芦田 裕也 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 窒素固定 / アンモニア / ヨウ化サマリウム / 水 / アルコール / モリブデン |
研究実績の概要 |
近年、常温・常圧という温和な条件下における窒素固定反応が広く研究されているが、触媒的な反応を達成した例は限られている。昨年度は還元剤としてSmI2、プロトン源として安価で豊富に存在するアルコールや水を用いた、高効率な触媒的アンモニア合成反応を開発した。 今年度は、昨年度開発した新しいアンモニア合成反応系について、より深い知見を得ることを検討した。そこで、開発した新しい反応系の触媒適用範囲を調査するため、精密に設計された合成難度の高い配位子を有する錯体群以外を触媒として用いることを試みた。種々検討を行った結果、触媒量の古典的な窒素錯体(1: trans-Mo(N2)2(PMePh2)4)存在下で、常圧の窒素ガスと還元剤としてSmI2、プロトン源としてエチレングリコールもしくは水をTHF中、室温で反応させることで、モリブデン原子当たり最大で40当量のアンモニアが生成した。また興味深いことに、触媒前駆体としてMoI3(THF)3、配位子として市販のPMePh2をin situで反応系に加えた際に、触媒1と同程度の触媒活性を示すことを見出した。これは事前に窒素錯体を合成することなくとも、触媒的アンモニア合成反応における活性評価を行えることを示している。そこで、種々の市販の配位子を検討したところ、ジフェニルホスフィノペンタン(dpppe)を配位子として用いた際に最も良好な活性を示し、モリブデン原子当たり最大で83当量のアンモニアが生成した。本結果は、市販の単純なホスフィン配位子を有する錯体を用いた触媒的アンモニア合成に成功した初めての例である。 また、本年度は昨年度開発した高効率な触媒的アンモニア合成に関して、より実用化に近い規模での反応開発の検討を実施した。既開発の触媒反応のスケールアップを検討することで、500 mg超のスケールでの窒素分子からのアンモニウム塩合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度においては、2018年度に開発したヨウ化サマリウムを還元剤、安価で豊富に存在するアルコールや水をプロトン源とする触媒的アンモニア合成方法を利用して、従来系では触媒活性を示すことのなかった単純な配位子を有する触媒を用いたアンモニア合成反応の開発に成功した。また、2018年度に開発した高効率な触媒的アンモニア合成に関して、より実用化に近い規模での反応開発の検討を実施した。その結果、既開発の触媒反応のスケールアップを検討することで、500 mg超のスケールでの窒素分子からのアンモニウム塩合成に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に得られたヨウ化サマリウムとアルコール及び水の組み合わせが、触媒的アンモニア合成において有効であるという知見を踏まえて、より安価で入手容易な金属触媒を用いた触媒反応の開発を行う。また、現在量論量使用しているヨウ化サマリウムの触媒化の検討を行う。
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