研究課題/領域番号 |
18J20708
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉崎 昂 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 宇宙化学 / 地球化学 / 地球型惑星 / 初期太陽系 / コンドライト / 難揮発性元素 / 元素分別 |
研究実績の概要 |
地球の材料物質を制約することを目標として,隕石試料の微量元素組成分析を行った。まず4月から5月まで米メリーランド大に滞在し,1)エンスタタイトコンドライト隕石試料の全岩高精度微量元素組成の取得 2)上記試料に含まれる鉱物の局所微量元素組成の取得 3)炭素質コンドライト隕石試料に含まれる鉱物の局所微量元素組成分析を行った。以上の分析によって得られた結果に基づき,太陽系の進化過程において同じ挙動を示すと考えられていた難揮発性親石元素ペアの量比が,隕石種毎に10%程度異なることを見出した。この隕石試料間における組成差と地球試料の元素組成を基に,エンスタタイトコンドライトが,地球の材料物質に化学的に類似していると結論付けた。これは,近年示されたエンスタタイトコンドライトと地球試料の同位体組成の類似性と整合的であり,地球の材料物質がエンスタタイトコンドライトに類似していたことを強く支持するものである。隕石構成鉱物の局所元素組成分析に基づき,隕石全岩での難揮発性親石元素組成差は,鉱物が高温ガスから結晶化する際や,太陽系内部において鉱物が物理分別されることで生じた可能性も示した。以上の成果を原著論文としてまとめ国際誌に投稿し,現在レビューを受けているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度の当初の計画はコンドライト隕石試料(エンスタタイト・炭素質)の処理及び試料の全岩・構成鉱物毎の難揮発性親石元素組成の一次分析であった。前年度末に隕石試料の処理を前倒しして行った結果,当初の計画を上回り,全ての元素組成分析を完了できた。その結果,太陽系試料間で不変であると考えられていた難揮発性親石元素の量比が,有意に変化していることが確認された。この組成差に基づき,コンドライト種の中でも特にエンスタタイトコンドライトが,化学的に地球の材料物質に類似していることを見出した。この結果は,先行研究による太陽系試料の同位体組成分析結果と整合的である。以上の成果は,地球材料物質論に難揮発性親石元素組成という新たな観点を導入し,地球材料物質の解明という本課題の目標に対し重要な知見をもたらすものである。これは当初予定していた以上の進展であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
地球型惑星の多様性の理解を目標として,火星の化学組成モデルの構築を行う。火星隕石および探査機により得られた火星表層のの元素組成,火星の物理的特性に基づき,火星のマントル,金属核,全球の化学組成を制約する。得られた化学組成モデルを地球のものと比較し,地球型惑星の形成・進化過程に関する新たな知見を得る。
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備考 |
Travel Grant, The Meteoritical Society, July 22, 2018.
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