研究課題/領域番号 |
18J20759
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
福井 昌則 広島大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 創造性 / コンピュテーショナルシンキング / プログラミング的思考 / 教育工学 / 学習科学 / 学習工学 / 認知科学 / 教育心理学 |
研究実績の概要 |
1.コンピュテーショナルシンキング(CT)を育成するための学習支援システムの開発:CTを育成する題材として,図形の分類課題を用いた.しかし図形の分類課題をそのまま解くだけでは,CTが育成できたかどうかは定かではない.図形の分類課題を行いCTが育成するために,ベン図とYes/Noチャートの活用がCT育成に有効であることが示唆されている.そのことに基づき,ブラウザ上で動くシステムを開発した.このシステムは,正誤判定機能を実装しており,この機能を用いることで,生徒は即座に答えを確認することができる.また,教員が一つ一つの答えをチェックする必要がなくなる.このシステムを用いた試行的実践を行い,大半の生徒のCTを育成することができた.現在,このシステムに機能を追加する作業を実施しており,そのシステムでさらなる実践を行う予定である. 2.創造性育成方略の提案とその分析:数学の分野において,作問学習は創造性育成に関係があると指摘されている.本研究では作問学習を援用し,生徒に所与の問題を変形・改良を通して創造性を育成する題材/方略の方向性を探るために変形・改良の実態把握を試みた.題材として,コラッツ問題,ロシアンルーレットを用い,高校3年生と大学2年生を対象に,所与の問題を変形・改良させた.その結果,高校と大学では題材によって変形・改良箇所に大きな差異があることが把握され,その育成が可能であることが示唆された.この結果を踏まえ,既存の創造性測定尺度などとの関連性を把握する研究を進めている. 3.その他:創造的態度と情報に関する社会観との関連性の検討,ブロックプログラミング環境を用いた協調学習支援システムの開発,生徒のアイディアを活用した数学的ゲームを題材とする数学研究なども行なっている. そして,多数の国際学会発表と論文発行/投稿,3つの賞を受賞することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題に対し,当初の予想を上回る進捗をあげることができている. 2018年度は,論文が5本発行(条件付き採録1本),査読中論文6本,国際学会発表7件の成果をあげることができた. 1.コンピュテーショナルシンキング(CT)を育成するための学習支援システムの開発では,図形の分類課題をCT課題化し,ベン図とYes/Noチャートを用いたブラウザ上で動くシステムを開発した.このシステムは,正誤判定機能やlogを取る機能を実装しており,これらの機能により生徒の進捗の把握を可能とした.また,教員のサポートがなくとも生徒が一人で実践を行えることをかのうとした.このシステムを用いた試行的実践を行い,大半の生徒のCTを育成することができた. 2.創造性育成方略の提案とその分析では,作問学習を援用し,生徒に所与の問題を変形・改良を通して創造性を育成する題材/方略の方向性を探るために変形・改良の実態把握を試みたところ,高校と大学では題材によって変形・改良箇所に大きな差異があることが把握され,その育成が可能であることが示唆された. 3.他に創造的態度と情報に関する社会観との関連性の検討,ブロックプログラミング環境を用いた協調学習支援システムの開発,生徒のアイディアを活用した数学的ゲームを題材とする数学研究なども行なっており,こちらについても論文投稿を行うことができた. その結果,多数の国際学会発表と論文発行/投稿,3つの賞を受賞することができた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題1(コンピュテーショナルシンキング(CT)を育成するための学習支援システムの開発)に対し,開発したシステムによる実践を計画しており,その結果を人工知能学会などに投稿する予定である.また,そのシステムにさらに機能を追加し,その内容に関しても論文投稿を行う.
本研究課題2(創造性育成方略の提案とその分析)に対し,現在実践を通して多数のデータを得ており,それを分析中である.この結果を踏まえることで,本研究における創造性を育成するための方略および創造性に影響を与える箇所の特定が可能となる可能性がある.このことは,認知科学や学習科学の観点からも大きな成果になるのではないかと考えられる.
本研究課題3(その他)に対し,創造的態度とプログラミングに対する様々な意識との関連性については,現在条件付き採録の結果を得ており,その発行に向けて準備を進めているところである.そしてブロックプログラミング環境を用いた協調学習支援システムの開発については,ブロックを動かした生徒を特定できる機能の実装を現在行っており,それを実現することで新しい協調プログラミング学習を実現することが期待できる.生徒のアイディアを活用した数学的ゲームを題材とする数学研究では,現在オープンエンド的要素を有するカードやパズルを用いた数学教育の題材開発を進めており,この題材を用いた実践を計画している.
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