本年度は、表面プラズモンアンテナを備えたゲート制御量子ドットによる単一光生成電子の検出に取り組み、表面プラズモンアンテナによる光生成電子検出効率向上の実証を目指した。表面プラズモンアンテナについては、これまでの知見をもとに、希釈冷凍機中の試料への光照射を行う現実的な光学的配置において約20倍の透過増幅が期待される構造を新たに設計し、GaAs/AlGaAsヘテロ接合を用いたゲート制御量子ドット上に作製した。作製した試料を希釈冷凍機中に配置し、前年度までに得られた入射光のアライメント方法を適用したうえで、量子ドットに単一光子レベルの光照射を行った。量子ドットでの光生成電子検出効率は当初の想定よりも低くなった一方で、電子検出以外の光応答信号が多く得られた。これらは表面プラズモンアンテナを通過した光子が量子ドット以外の領域で吸収されたことにより生じたものと考えられ、表面プラズモンアンテナの効果を検証するためにはこれらの信号も含めて解析が必要である。また、光応答信号および応答確率の波長依存性から、GaAsのバンドギャップに近いエネルギーの光照射により量子ドットの動作電圧シフトが起こることがわかった。光照射により量子ドットの動作電圧がシフトすることはこれまでに知られていたものの、その波長依存性は明らかになっていなかった。この結果は光照射下で安定動作する量子インターフェースの開発を行う上で重要な知見である。
|