研究実績の概要 |
高発がん性リボソーム病関連タンパク質を対象として、それらの発現抑制がヒト細胞のがん化にどのような影響を与えるかを網羅的に解析し、さらに、がん抑制活性が認められたものについては、その分子機構の解明を目指している。これまでにsiRNAによる発現抑制細胞を用いた軟寒天コロニー形成試験を行った結果、がん抑制メカニズムが既知であるRibosomal Protein L5(RPL5)およびRPL11(共にMDM2抑制を介したp53活性化)に加えて、RPS7, RPS17, RPS19を新規がん抑制因子として同定した。 昨年度は、当初の計画通り、shRNAによるRPL11安定発現抑制細胞の樹立を行った。さらに、私の系においてがん抑制活性が初めて示されたRPS19の安定発現抑制細胞も同時に樹立した。そして、これらの細胞を用いて軟寒天コロニー形成試験を行ったところ、siRNAの系の結果と一致して、どちらの安定発現抑制細胞でもtransformationが観察された。これは、RPL11およびRPS19がヒト細胞のがん化の抑制に関わるタンパク質であることを示唆する重要な結果である。 一方、新たにがん抑制活性が確認されたRPS7, RPS17,RPS19のがん抑制メカニズムは全く不明である。昨年度、これらの因子を対象としてp53経路を介してがん抑制を行っている可能性を検討した。しかし、3つ全ての因子に関してp53以外の経路を介してがんを抑制している可能性が疑われた。そして、質量分析法によって当該因子結合タンパク質の解析を行ったところ、それぞれの因子に特異的な結合因子候補がいくつか同定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は当初の計画通り安定発現抑制細胞の樹立および同細胞によるがん抑制活性の解析を行うことができた。また、RPS7, RPS17, RPS19によるがん抑制メカニズムの解明にも着手し、当該因子がp53以外の経路を介してがん抑制的に働いている可能性を見出した。そして、更なるメカニズム解明のために、質量分析法を用いて当該因子に結合するタンパク質候補をいくつか同定することができた。安定発現細胞の樹立の際、shRNAと共発現させる16E7、活性化KRasの導入に手間取ってしまったことや同時平行して進めていたCRISPR-Cas9法によるヘテロノックアウト細胞の樹立ができなかったことで、多少時間をロスしてしまったが、上記したように全体的にはおおむね順調に研究は進展していると考えている。
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