研究課題/領域番号 |
18J20823
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
長島 皓平 慶應義塾大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ジョルジョ・アガンベン / ギー・ドゥボール / スペクタクル / 資本主義 / エーリク・ペーターゾン / ヴァルター・ベンヤミン |
研究実績の概要 |
当該年度においては、イタリアの哲学者であるジョルジョ・アガンベンの思想が有する現代政治理論における位相を精査し、明らかにするとともにその理論的意義を検討することを引き続き試みた。とりわけ、政治理論における古典的なかつ近年再び注目を集めている主権と統治というテーマからアガンベンを扱った初年度に対し、当該年度においてはそうした古典的な主題をもとに構成されたアガンベンの哲学が高度資本主義社会をどう捉えているかという点に着目することで研究の進展を試みた。 とりわけ、当該年度の研究においては本研究の出発点となる政治神学との関連においてアガンベンが論じる宗教と資本主義に着目した。すなわち、西洋における神の超越性と教会が有する機能の世俗化という近代の営みが主権と統治におけるアガンベンの対象である一方、資本主義社会の功罪を論じるにあたってアガンベンが着目するのは信仰と礼拝であった。 こうしたアガンベンの問題意識は、主権権力の生政治的機能というこれまで毀誉褒貶あい半ばしてきたテーマと乖離することなく、フランスの映画作家にして運動家であるギー・ドゥボールの問題系を批判的に受容することで形成されており、本研究においてはアガンベンがドゥボールの理論をどのように批判しつつ自家薬籠中のものとし、自身の理論を鋳造しているのかという点に着目しアガンベンの議論がアガンベン自身のこれまでの権力論と重なり合うのかという点を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね当初の計画通り、研究を遂行することができた。 とりわけ、アガンベンの問題意識が有する対象の多様さをテーマの首尾一貫性を損なうことなく示すことに成功したといえる。本研究は国内外の学会において発表し、論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、初年度における主権と統治、次年度における高度資本主義社会批判に続き、アガンベンを政治神学という問題設定からあらためて論じる。とりわけ、これまでカール・シュミットやヤーコプ・タウベスらを中心とする政治神学の議論を中心としてきたが、アガンベンが師事したマルティン・ハイデガーやアガンベンが理論的に多くを負っているハンナ・アレントとの関連における存在論的政治という問題設定へと展開する。 アガンベンの議論の出発点はシュミットの主権理論のミシェル・フーコーに依拠した生政治的視点からの改鋳であり、そうした議論を通じてアガンベンは現代における全体主義の脅威という問題を提示していたのであった。政治神学をめぐるアガンベンの議論はこうした問題意識を発展させ、さらなる理論的精緻化を図ったものとして位置付けられる。 今後の研究においては、アガンベンが全体主義の脅威に対して提示する戦略がどのような意義を有するのかという点に着目する。とりわけ、前期ハイデガーの存在論的差異に着目することで存在論的政治の指針を見出そうとする現代政治理論の領域における理論家らに対して、アガンベンがハイデガーをどのように批判的に受容したか、また、同様にハイデガーを批判的に受容することで自身の議論を展開させたアレントとアガンベンの描く政治の差異を明らかにすることで、アガンベンが現代政治理論において有する意義を明らかにすることを試みるとともに、アガンベンにおいて存在論と政治神学がどのように関連し合うのかという点を精査する。
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