研究課題
昨年度実施した、ポリエチレンと酸素の組み合わせで行った十数回の実験に加えて、今年度は酸化剤として亜酸化窒素を使用し、さらに十数回の実験を行い、80%以上の実験に成功した。亜酸化窒素は気体あるいは酸素に比べ、窒素が含まれている分、酸素の濃度が低い。そのため燃焼ガスに含まれる酸化物質濃度が酸素を利用したときと異なる。今年度行った実験により、亜酸化窒素を酸化剤として利用したときの燃焼ガスに含まれる酸化物質濃度がノズル浸食に及ぼす影響が明らかになった。予想していたものよりも良い実験結果が得られたため、予定より早くノズル浸食の実験的モデルの構築に至った。本モデルは、燃焼ガスおよびノズル壁面との化学反応速度ならびに燃焼ガス中の酸化化学種の拡散を考慮している。これに関して、航空宇宙分野で最大の国際学会AIAA Propulsion and Energy Forumで本モデルについて発表し、最優秀論文賞を受賞した。そして、この論文は後に査読付きジャーナル(Journal of Propulsion and Power)に掲載された。この優れた結果が評価され、ローマ大学と新たな共同研究を結ぶことにつながった。また、本モデルは、本研究室とJAXA/ISASが共同で開発を進めているハイブリッドロケットキックモータの設計に適用された。さらに、本研究結果から得られた重要な知見として、再生冷却システムを採用した従来型銅ノズルの溶融温度と、黒鉛ノズルのノズル浸食開始温度を比べると、後者の方が500K高いことが挙げられる。黒鉛ノズルに再生冷却システムを採用すれば、より安全でノズル浸食が起こりにくいノズルを開発することができると考え、2020年度科研費(若手研究)に応募し、2020年4月に採択された。(課題名:再生冷却によるハイブリッドロケット黒鉛ノズル浸食抑制の実証)
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Journal of Propulsion and Power
巻: 36 ページ: 1~12
10.2514/1.B37568