研究課題
採用最終年度である本年度はSF-induced-NLO現象のうち、シングレットフィッション(SF)過程に重点を置いて研究を行い、主に(i)新規SF単分子色素の探索、(ii)SFに寄与する振電相互作用の解明、(iii)結晶場効果がSFダイナミクスに及ぼす影響の検討を行った。(i)SF単分子設計の新たな基軸として、従来の開殻性に加え、交換積分の寄与に基づいた分子設計が有効であることを新たに示し、特に小サイズ色素への多重ヘテロ置換によって種々の新規SF色素を見出すことに成功した。(ii)振電相互作用に関しては、前年度の制約つき密度汎関数法に基づく計算法による検討をさらに発展させ、空間密度解析によって振電相互作用を制御する具体的な化学修飾について検討した。(iii)マクロ系の設計で重要となる結晶場効果については、古典分極力場を用いた計算法を導入し、結晶場効果による電荷移動状態の安定化と励起子移動がSF効率に及ぼす影響を、量子マスター方程式および相対緩和因子を用いた解析から解明することに成功した。以上より、本年度の取り組みによって、従来不完全であったミクロ(単分子)からマクロ(結晶)の空間スケール全体を俯瞰した現象のメカニズム解明と、空間スケール相互のフィードバックに基づく高効率SF物質設計の在り方を初めて示すことに成功している。得られた知見や用いた解析手法は、元の計画にあったSF-induced-NLO現象の解明のみならず、ミクロからマクロに亘る励起状態ダイナミクスやそれに基づく様々な物性発現やその制御にも適用可能であり、今後のSF関連研究の進展にも大きく寄与すると期待される。これらの成果は、国際的な学術雑誌にて複数報告済みである。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Journal of Physical Chemistry C
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The Journal of Chemical Physics
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