本年度の研究成果について、期待以上の進捗があった。①3年間の全体の研究課題における目標の一つであった、カラスの社会行動の発達基盤について査読付き和文誌に研究成果を報告した。具体的には、カラスのつがい形成個体を対象として、ペア間の利他行動の非対称性について報告した。この研究知見は、それまで単一の事例報告や観察研究の多かった長期的なつがい関係の形成に対して、利他行動の性差を軸に新たな知見を提供した。②行動薬理操作による優劣関係の形成に対するコルチコステロンの機能に関する本実験が完了した。現時点において完了した解析において、コルチコステロンは生体内でのACTH上昇からおよそ15分後から20分後にかけて血中内でのピークに到達することが判明した。この成果は、現在行動データを解析中であり、解析終了次第論文として投稿予定である。研究成果②を論文化するにあたり、日本動物心理学会第80回大会にて途中経過を発表し他の研究者から有意義なフィードバックを得た。③行動薬理操作およびホルモン測定の計測系を研究室に新規導入を完了した。人為的にコルチコステロン濃度を上昇させる予備実験の実施により、カラスの血中コルチコステロン濃度および血中までの代謝時間の同定が完了した。また、カラスのコルチコステロンが市販のELISAキットを用いて正確に測定できることが確認できた。本研究成果は、研究成果①と合わせて学会発表後、論文投稿予定である。
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