研究課題/領域番号 |
18J20917
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
奥谷 公亮 北海道大学, 国際感染症学院, 特別研究員(DC1) (10907736)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | A型インフルエンザウイルス / 非中和抗体 / IgA抗体 / 出芽阻害活性 |
研究実績の概要 |
ウイルス特異的IgA抗体が、従来の中和活性とは異なるメカニズム(ウイルス出芽阻害)によって、A型インフルエンザウイルスの亜型間交差感染防御免疫に寄与すると考えられている。そこで、本研究は、HA亜型間で交差反応性を有するが、中和活性を持たないIgA抗体に着目し、同様の抗ウイルス活性が認められるか否かを検証することを目的とした。 まず、複数の異なる亜型のHAに結合能を有するが中和活性を持たないマウスモノクローナル抗体の可変領域をコードする重鎖および軽鎖の遺伝子を、ヒトIgG重鎖発現プラスミド、ヒトIgA重鎖発現プラスミドおよびヒト軽鎖発現プラスミドにそれぞれ挿入した。構築したプラスミドを培養細胞にトランスフェクションすることで、同じ可変領域をもつIgGおよびIgA抗体が得られた。IgA抗体はゲル濾過クロマトグラフィーによって多量体と単量体に分画した。なお、作出した抗体はウイルスの吸着や膜融合を阻害しない非中和抗体であることが確認された。作出した抗体間で、H1、H5、H6亜型のウイルス株に対するウイルス出芽阻害活性を比較したところ、多量体IgA抗体存在下で培養した感染細胞の上清中に含まれるウイルス出芽量がIgG抗体存在下と比較して有意に減少した。ウイルス感染細胞を電子顕微鏡で観察したところ、多量体IgA抗体存在下で培養した感染細胞において、ウイルス粒子が細胞表面に集積している像が多く見られた。続いて、ウイルス感染細胞を各抗体存在下で培養し、増殖の指標であるプラークサイズを比較した。多量体IgA抗体存在下では、IgG抗体存在下と比較して、異なる亜型のウイルス3株のプラークサイズが有意に小さくなった。以上の結果から、多量体IgA抗体は、細胞からウイルス粒子が放出される過程を阻害することで、異なるHA亜型のウイルス株に対して抗ウイルス活性を示すことが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ウイルス出芽阻害活性の比較まで完了したため。
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今後の研究の推進方策 |
他のHA亜型のウイルス株に対して出芽阻害活性を示すか否かを検証する。また、生体の亜型間交差感染防御免疫に寄与するかマウスを用いた動物実験により検証する。
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