研究課題
平成30年度は不快な記憶の想起を意図的に抑制することによってその記憶の不快さが低減するかについて実験的に検討を行った。 実験において参加者は,不快な画像を覚えたあとにその画像について思い出さないようにすることを繰り返した。 この前後に,実験参加者は記憶の不快さを評定した。 評定の変化を見ることで想起の意図的な抑制が記憶の不快さを低減するかを評価した。 実験の結果,不快さが低減するかどうかは参加者の性格特性によって調整されることが明らかとなった。 具体的には,うつや不安の程度が低い参加者では意図的な抑制によって記憶の不快さが低減した一方で,うつや不安の程度が高い参加者はむしろ不快さが増幅した。 この結果はまず,記憶の制御が感情の制御に大きな役割を果たしていることを示している。 さらに重要なことは,本研究で参加者に教示したような「考えない」という記憶の制御方略があらゆる人に有効であるわけではなく,記憶の不快さの低減を必要とするうつや不安の傾向が高い人にとってはむしろ逆効果だということである。 この研究成果はInternational Convention of Psychological Scienceという国際学会で発表された。本研究成果に加えて,それまでの研究成果についても日本認知心理学会と日本心理学会でポスター発表を行った。また,以後の研究ではコンピュータシミュレーションを用いる予定であるため,その権威であるUniversity of Colorado, Boulder のRandall O'Reilly 教授を訪問し,シミュレーションに関する知識や技術を学ぶとともに,想起の意図的な抑制に関するシミュレーションモデルの構築を行った。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度は当初の計画通り,研究課題に関する実験的な検討を進められている。 また,その結果をまとめて年度内に学会にて発表することができた。 さらに,今後の研究において重要となるシミュレーションについても開始することができた。
当初の計画通り,実験を実施し研究課題を遂行する。 それと同時にこれまでの研究成果を論文にまとめ投稿し国際論文誌での出版を目指す。 シミュレーションモデルの構築に関しては,O'Reilly教授の協力も仰ぎながら,効率的に研究を進められるようにする。
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