・カンモンハタの脳内のCry遺伝子とメラトニン受容体遺伝子の発現局在をin situハイブリダイゼーション法を用いて調べたところ、量遺伝子の発現は視床下部と脳下垂体域において確認された。生殖制御の中枢機構である視床下部と脳下垂体において量遺伝子が発現するという結果は、当初の仮説であった、これらの遺伝子が月周性産卵の時刻合わせに関与することを示している。当該遺伝子の月周性変動に関しては、現在解析を進めている途中である。 ・脳下垂体培養実験においては、昨年度の課題であった細胞の生存率の改善に至らず、結果は得らなかった。メラトニンが脳下垂体域の生殖腺刺激ホルモン遺伝子に与える影響の分子生物学的経路に関しては今後、異なる手法を用いたアプローチが必要と考える。 ・昨年度に行ったカンモンハタの飼育実験について、産卵現象の有無という観点から改めて解析をしたところ、夜間に光がない条件下(新月状態)の個体よりも、夜間に光がある条件下(満月状態)の個体の方が一晩の産卵数が明らかに多いということが分かった。すなわち、夜間の月光の存在が同種の産卵を誘導する可能性を見出した。このことは、夜間の月光情報がメラトニンやCry遺伝子を介して生殖腺発達や産卵の時刻合わせに使用されることを示唆する結果となった。 ・これまでに得られた結果は論文としてまとめ、国際的な学術雑誌へと投稿し研究成果の社会還元に努めた。さらに、研究会やセミナーにおいて研究発表を行うことで当該分野へと周知し活発な議論を招いた。
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