研究課題/領域番号 |
18J20959
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤代 有絵子 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | カイラル磁性体 / 異常ホール効果 / スキュー散乱 / 薄膜 / 高圧合成 / 半金属 |
研究実績の概要 |
今年度の研究では、まずカイラル磁性体MnGe薄膜において巨大な異常ホール効果を発見した。低温・低磁場においては、ヘッジホッグ・アンチヘッジホッグのトポロジカル磁気構造が形成されているが、60Tまでの強磁場下トランスポート測定を行ったところ、強磁性領域においてホール伝導度が約40,000 Ω-1cm-1、ホール角が約20 %に及ぶような巨大異常ホール効果を発見した。また、ホール伝導度の絶対値の大きさや、ホール伝導度と縦伝導度のスケーリング則から、散乱機構に由来した新奇なホール効果である可能性が高いと考えられる。そこで膜厚を変化させて磁気異方性による変化を調査したところ、近年提唱された、熱励起されたスカラスピンカイラリティによる新しいスキュー散乱機構の描像と矛盾しない結果であることが明らかになった。これは、短距離スピン相関がもたらす新しいタイプの異常ホール効果であり、今後フラストレート磁性体や薄膜界面などでも同様の現象が期待できる。また、超高圧合成を用いて、IrSiの新規monoclinic相を合成することに成功し、トランスポート測定の結果から半金属状態であることを明らかにした。さらにバンド計算からは、表面状態に大きなRashba分裂があることが示唆され、今後薄膜化などができればスピントロニクスへの応用も期待できる。既に論文を刊行しており、Physical Review Materials誌のEditors'Suggestionに選出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の研究成果について、MnGe薄膜の巨大異常ホール効果については既に論文を投稿中である。また、IrSiの新規monoclinic相の超高圧合成については、既に論文を刊行している。加えて最近では、当初研究計画の予定にはなかった、トポロジカル半金属に関連する研究も行っており、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、カイラルな結晶構造をもつトポロジカル半金属に重点をおいて研究を行う予定である。加えて、他の物質系にも目を向け、特に磁性とベリー位相の共存がもたらす新奇な輸送現象を探索していきたい。
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