本研究は、(1)モバイルマネーを活用したフィールド実験を通して出稼ぎ労働者の厚生及び送金メカニズム を分析する研究と、(2)モバイルマネーの導入が妊婦健診の受診行動 に及ぼす影響について既存の家計調査データを分析した研究の二本立てである。 (1)については、モバイルマネー が普及し出稼ぎ労働者も多いバングラデシュを舞台にマッチングファンド実験を実施した。マッチングファンド実験とは、被験者の拠出した金額に応じた額の金銭支援を被験者に対して行うものである。2020年度は実験後の追跡サーベイの最中に、COVID-19がバングラデシュで流行しロックダウンが行われたため、ロックダウンがバングラデシュ家計の厚生や送金行動に与えた影響を分析して論文を執筆し、博論の後半部とした(国際学術誌に投稿予定)。実験の効果の分析については、今後も追跡サーベイを行い分析を進めていく。 (2)の研究については、”Impact of Mobile Money Adoption on Maternal Health Seeking Behavior: Evidence from Rural Uganda “(ウガンダ農村におけるモバイルマネーの普及と周産期医療へのアクセス)が国際学術誌(journal名:Sustainability)に掲載された。さらに、 2 つ目の論文 “Receiving maternal care in extreme weather: evidence of mobile money use in rural Uganda “(洪水・干ばつの状況下での妊産婦検診:ウガンダ農村におけるモバイルマネー普及の影響)は神戸開発経済・経済史セミナー(神戸大学、2020年6月)や、医療経済学会年次大会(WEB、2020年9月)での発表を行い、博論の前半部となった(国際学術誌に投稿予定)。
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