研究課題/領域番号 |
18J21016
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武田 紘樹 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ローレンツ不変性 / 異方性 / 光速 / 光共振器 / 相対性理論 / 干渉計 / 対称性 / 拡張標準模型 |
研究実績の概要 |
本研究は光リング共振器を用いて光速の異方性を探査することで光子のローレンツ不変性を高精度検証することを目的としている。我々はこれまで簡易な信号変調のための非連続回転系と光学系を用いて、1e-15レベルでの世界最高精度で奇パリティの異方性探査を行ってきた。その感度は回転に伴う振動雑音で制限されていたため、振動感度を低減することでさらなる高精度検証を目指している。 2018年度までに信号変調のための連続回転機構の開発と、振動感度の低い入射光学系と共振器部が一体となったモノリシック光学系の開発を達成している。当年度はこれらを用いて長期片道光速の異方性探査を行うのが目的であった。そのための事前の準備として、強度変動の評価や高剛性の回転台の設置を計画通りに行うことができた。現在の静止時感度はレーザー光の偏光状態が変動することによる雑音で支配されている。回転時の感度においても、回転機構の姿勢や歪みが偏光状態の変動を介して雑音に寄与する可能性がある。連続回転機構上にモノリシック光学系を移し、レーザー光強度を上げた状態で光ファイバーのパス等を調節して固定しその感度を測ることで、現在の最高精度を二桁上回る1e-17のレベルでの探査が可能であると見込まれる感度を連続回転機構上で非回転時に得た。これによって、レーザー光の実効的な強度の変動を十分抑えることに成功した。さらに回転機構の歪み等を抑制するために、高剛性の回転台を購入し配線と設置を行った。 また、ある種のローレンツ不変性の破れが許されている重力理論においては重力波は非テンソル的な偏極成分を持つことが許される。重力波の自由度の性質はこのように重力理論を反映するので、重力波の偏極モード検証によって重力理論検証が可能となる。本年度は本研究課題を派生させ、重力理論検証に必要なコンパクト連星からの重力波の偏極モード分離条件などを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は光学系と回転機構の調整を進め、奇パリティのローレンツ不変性の破れを検証すべく片道光速の長期異方性探査を目指した。強度変動の評価や高剛性の回転台の設置を行うことができた。しかし回転機構については、ロータリーコネクタを固定する位置が回転軸とずれて下部に負荷がかかることで導入される雑音のため、感度を維持するために回転軸や定盤上の傾斜の調節を逐一必要とされ、長期観測や連続的なデータ解析の妨げになってしまっている。そのため長期探査は未だ実施に至っていない。以上を踏まえ、やや遅れていると判断した。 一方で、ローレンツ不変性の破れが重力波に与える影響に着目し研究課題を発展させ、重力理論検証に必要なコンパクト連星からの重力波の偏極モード分離条件などを得るという付加的な成果を出している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は回転台の回転軸の振れによって光学系にもたらされるひずみによる雑音の影響を低減するため、回転台下部等からの電源供給法を導入し、干渉計部と共振器部が一体となったモノリシック光学系で光リング共振器を用いた長期片道光速の異方性探査に入る。
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