研究計画当初では,令和2年度にキューブ状ヘマタイト粒子に関する実験的な研究を遂行する予定であった.しかしながら,キューブ状ヘマタイト粒子に関する実験的な研究は,現在,国外の様々な研究グループにより幅広く行われている.新規性および独創性を追求するために,単純せん断流中におけるキューブ状磁性粒子分散系を対象としたブラウン動力学法を構築し,キューブ状磁性粒子の凝集構造と磁気粘性効果の関係性の解明を試みた.具体的には,平成31年度に構築した熱力学的平衡状態におけるキューブ状ヘマタイト粒子分散系を対象としたブラウン動力学法を,単純せん断流中におけるキューブ状磁性粒子分散系に適用することにより,キューブ状磁性粒子の凝集形態の内部構造とレオロジー特性の関係性を解明した.得られたシミュレーション結果から,凝集構造の内部構造の相違により非常に特徴的な磁気粘性効果が現れることが明らかになった.また,ある条件下において,キューブ状磁性粒子分散系は負の磁気粘性特性を有している可能性を示した. また,期待通りに研究が進展したため,回転磁場中におけるキューブ状磁性粒子分散系を対象とした擬2次元ブラウン動力学法を構築した.本シミュレーション・プログラムを用いて,粒子間の磁気的な相互作用,磁場の強さおよび周波数などの種々の要因を変化させることにより,凝集体の形成メカニズム凝集形態の内部構造の転移現象ならびに粒子の磁気モーメントの回転磁場への追従性などを解明した.
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