研究課題/領域番号 |
18J21048
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中尾 佳奈子 東北大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 結合因子の同定 / 生物学的パスウェイの同定 |
研究実績の概要 |
今年度は、種々の基礎条件検討を行ったうえで、本実験を行った。まず、免疫沈降-マススペクトトル解析(LC-MS/MS)に供するため、Doxycycline誘導性プロモータ制御下にN末端FLAGタグつきSAMD9を発現するプラスミドベクターをHEK293細胞のゲノムに組み込んだ安定発現株を樹立した。そして、この細胞株を大量培養したのち、Doxycycline処理でFLAG-SAMD9(野生型もしくは変異型)を発現させた。そして1% β-DDMで可溶化したのち、抗FLAG-M2抗体レジンを用いてFLAG-SAMD9をその共役因子とともに捕捉した。洗浄後に3xFLAGペプチド添加で捕捉物を回収し、LC-MS/MS解析に供した。その結果、SAMD9L、MYH9、MYH10、TCPQ、GRP78の5種のタンパク質を同定した。 網羅的ゲノム編集スクリーニング解析(Genome-scale CRISPR-Cas9 knockout screening;GeCKO)v2では、HEK293細胞をGeCKO v2 レンチウイルスライブラリを感染させ、ランダムに遺伝子が不活化された細胞集団を作製した。次に、Doxycycline誘導性プロモータ制御下にN末端FLAGタグつきSAMD9(野生型もしくは変異型)を発現するプラスミドベクターを、GeCKO処理済みHEK293細胞のゲノムに組み込んだ、安定発現株を樹立した。その後、Doxycycline添加でSAMD9を誘導発現し、2週間培養を行った。3種類(野生型、変異型、空ベクター)の細胞株をduplicateで作製した後、計6ラインの細胞株からゲノムDNAを抽出した。そして、共通配列に対するPCRと次世代シーケンシングにより、組み込まれたgRNA配列を分析した。現在、パスウェイ解析により、変異型SAMD9発現細胞においてエンリッチされる細胞機能の特定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験は、おおむね計画通りに遂行することができている。LC-MS/MS解析では、条件検討の段階で、安定してタンパク質を収集できる手法を見出したことが、実験の遂行のうえで重要なステップとなった。具体的には、蛍光タグをFLAG-SAMD9に付加することにより、収量が増加することを明らかにした。そこで本実験では、EGFPタグをN末端に、TagRFPをC末端に付加したFLAG-SAMD9を用いた。さらに条件検討において、SAMD9のSAMドメイン領域(N末端から約90アミノ酸)を欠失させることで、さらに回収できるタンパク質量が増加することが明らかとなった。そこで、本実験では、EGFPタグおよびTagRFPタグを両端につけたFLAG-SAMD9(野生型、変異型、SAMドメイン欠失体)と、ネガティブコントロールとして、EGFP-TagRFP融合タンパク質を発現するHEK293細胞を解析した。そして、ネガティブコントロールの細胞株から得られたタンパク質のリストをサブトラクトすることにより、真陽性シグナルを同定した。
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今後の研究の推進方策 |
LC-MS/MS解析で同定されるタンパク質は、SAMD9と強固に結合・相互作用している蛋白に限られる。そのため、より弱い結合の蛋白でも検出できる、yeast two hybrid法も行い、共役因子のスクリーニングをさらに進める予定である。 また、MIRAGE症候群患者由来皮膚線維芽細胞は、MIRAGE症候群の分子レベルでの特徴である強い細胞増殖抑制を反映して培養が困難であることから、昨年度はLC-MS/MS解析およびGeCKO v2解析いずれにも用いることができなかった。今年度は、LC-MS/MS解析およびGeCKO v2解析を行えるよう、培養条件の最適化を試みる予定である。
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