研究課題/領域番号 |
18J21058
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
松原 翔吾 立命館大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | 光解離性保護基 / クロロゾーム / ケージドクロロフィル / 超分子重合 / 光捕集アンテナ |
研究実績の概要 |
クロロゾーム形成の解明を目標とし、クロロゾーム型色素集積体の形成過程のモデル化を研究の目的としている。2-3年次終了時点でクロロゾーム型色素集積体のモデル化を達成する予定であったが、光解離性保護基をクロロフィルに導入した「ケージドクロロフィル」を用いて、光誘発性超分子重合することによって、クロロゾーム型色素集積体が成長していく過程のモデル化(可視化)に成功した。 超分子形成に重要なクロロフィルの水酸基に光解離性保護基を導入しエーテルとして保護することによって、一時的に自己集積能を持たない(不活性化した)ケージドクロロフィルを合成した。ケージドクロロフィルのモノマー溶液中に光を照射することによって、ケージドクロロフィル分子が活性化され、自己集積が始まる。従来の自己集積化では高濃度のクロロフィル溶液に貧溶媒を加えることで、色素集積体を調製していた。この手法を用いた形成される色素集積体は、速度論的にトラップされる準安定状態の粒子状の集積体である。しかし、今回の新たな手法を用いた自己集積化は、従来の自己集積化とは異なり、速度論的にトラップされる準安定状態の集積体形成を避け、熱力学的に安定な集積体(チューブ状)を優先的に形成させることが可能である。これはまさに、天然のクロロゾームがクロロフィルを徐々に生合成・集積させている様と同様であり、クロロゾーム型自己集積体の形成過程をモデル化した初めての例である。本研究成果はJ. Am. Chem. Soc.にて報告し、クロロゾームの形成過程の解明だけでなく、新たな超分子形成法としての観点からも非常に興味深く、J. Am. Chem. Soc.の注目論文としても取り上げられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
一年次は光解離性保護基の合成及び保護基を導入したケージドクロロフィルの合成と、分光測定及び光誘発性超分子重合の最適化を行うことを目標とし、二年次からクロロゾーム型集積体の形成過程をAFM等の顕微観察で行う予定であった。しかし、非常に順調に研究が進行したため、2-3年次終了時点で達成するはずであったクロロゾーム型色素集積体の形成過程のモデル化を一年次終了時点で達成した。
|
今後の研究の推進方策 |
クロロゾーム型色素集積体の形成過程のモデル化を一年次終了時点で達成したため、二年次はより天然に近い環境下でのクロロゾーム型色素集積体の形成過程のモデル化を行う予定である。今回の研究報告では、クロロゾーム型色素集積体が成長する様をモデル化したものの、有機溶媒系で自己集積化を行った。しかし、天然クロロゾームにおいて有機溶媒環境下はありえないことであるので、二年次は水系での自己集積化を行う。 また、光解離性保護基を用いたケージドクロロフィル以外にも、光応答性超分子重合を用いたクロロゾーム型集積体の形成にも挑戦する予定である。その一例としては、スピロピランやアゾベンゼンのようなフォトクロミック分子の導入を検討しており、異性化による特性を利用して自己集積化をコントロールを行う。
|