本年度は、昨年度までに構築したKaiタンパク質間相互作用解析の技術基盤の下に、不均一なリン酸化状態を模倣したKaiC6量体を対象としてKaiA、KaiBとの相互作用解析に取り組んだ。 KaiAとの相互作用に関しては、KaiC6量体を構成する脱リン酸化状態のサブユニットとリン酸化状態にあるサブユニットが独立に振舞っており、脱リン酸化状態のサブユニットのみがKaiAとの結合に与っていることを示した。さらに、KaiBとの相互作用には、KaiC6量体中で少なくとも4つのサブユニットがリン酸化状態にあることが必要であり、KaiC6量体を構成するサブユニット間の協同的な振る舞いが重要であることを示した。 一方、溶液散乱とゲルろ過クロマトグラフィー法を応用してKaiA-KaiB-KaiC三者複合体の構造情報を取得した。それに基づいて構築した3次元構造モデルを対象に分子動力学シミュレーションによって構造安定性を評価し、三者複合体の構造モデルを提案した。興味深いことに、本複合体において、KaiBと相互作用しているKaiAのNドメインはCドメインを覆っており、これにより他のKaiC6量体との相互作用が妨げられていることがみてとれる。 さらには、KaiAとKaiB存在下において、KaiC6量体は特定のリン酸化状態でサブユニットの交換が亢進することを見出した。 以上を総合して、当初の計画以上に研究は進展したものと判断した。本研究を通じて、KaiC6量体のリン酸化という微視的状態の変化が、Kaiタンパク質間の巨視的な相互作用を制御する仕組みの一端を明らかにすることができた。本研究の成果は、分子集団として概日リズムを司る時計タンパク質の相互作用の制御機構の理解に資するものである。
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