研究課題/領域番号 |
18J21069
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
島藤 安奈 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 共同注意 / 計算論的モデル / 自閉スペクトラム症児 / 予測符号化 |
研究実績の概要 |
計算論的モデルでは視覚的注意は、目立つものを注視するbottom up性注意と意図や意識を含むTop down性注意の2つのシステムから成ると考えられる。発達心理学分野では意図理解の前駆体として共同注意に多くの関心が寄せられているが、乳児が大人の顔を見る段階 (face attention) からどのように共同注意を獲得し、さらには他者の意図を理解していくのかということは未だ疑問である。乳児が生まれて間もない頃から大人の顔を好んで注視することは知られているが、共同注意がいつ頃出現してくるのかについては、6ヶ月児で母親の見ている方向を追従するという報告や、11-14ヶ月の間で共同注意は獲得されるといった報告など、その発達には様々な議論がある。さらに自閉スペクトラム症児を対象とした研究では、共同注意自体に難しさがあるとするものや、視線の検出が難しいために結果として共同注意の獲得が難しいとするものなど、その見解に一貫性が見られない。 本研究では、face attentionから共同注意までの発達を予測するモデルとして、視覚的注意に関する計算論的モデルを応用し、bottom up性注意とTop down性注意の2つのシステムが発達後期の共同注意にどのように関連するのかを検討する。具体的にはbottom up性注意とTop down性注意の2つのシステムが区別できるように、3つの顔(Full face, Blurred face, Scarambled face)の条件刺激を作成し、これらの顔の女性が見ている物体を乳児が追従するかどうかを調べる。この研究は共同注意行動の背後の発達原理を探るという意味で重要である。現在、定型の乳児20名について予備実験が終了し分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は東京大学IRCNや大学機関の付属病院などの共同研究としてスタートすることとなった。他者の意図理解に至る共同注意の発達原理を探るという点では多岐に渡る研究分野の興味が一致するテーマであり、我が国の研究ではまだ十分とは言えない横断的研究を早期に実現することとなった。共同研究の実現のため、実際に実験に至るまでは少々時間を要したが、新たな研究アプローチの知見も増えさらに深みを増した研究となることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに自閉スペクトラム症児についても同様の実験を行なっていくつもりである。定型の乳児と自閉スペクトラム症児について、共同注意の発達を予測するモデルを提案し、さらにこのモデルが妥当かどうか計算論的に検証したいと考える。また、自閉スペクトラム症児の支援方法として、視覚シュミレーターなどのデバイスを用いた支援も提案したいと考える。
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