研究課題/領域番号 |
18J21110
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 亮 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | Cp*Co錯体 / エン反応 |
研究実績の概要 |
当初の予定どおり、配向基を導入したCp配位子の合成および、Rh、Co錯体の合成を行った。これらの錯体を用いてアルデヒド、ケトンをモデル基質とした様々な反応系を検討したが、目的の反応は進行しなかった。予定していたC(sp3)-H結合活性化反応が困難であったため、C(sp3)-H結合活性化反応についての知見を深めるため、Cp*Co錯体を用いたアリル位C(sp3)-H結合活性化反応についての検討を行った。Co錯体は同族のRh、Ir錯体にくらべ、メタラサイクルの求核性が高いという知見をもとに、アリル位C(sp3)-H結合のイミンへの付加反応を検討した。結果、所望の生成物が得られたものの、反応機構に関する対照実験を行うと、C(sp3)-H結合活性化機構ではなく、Lewis酸触媒作用によるエン反応であることが強く示唆された。目的の反応ではなかったものの、従来困難であった1置換アルケンと活性化されていないイミンを用いたエン反応であることと、Cp*Co錯体がLewis酸触媒としても用いることができるということを示す結果であった。また、活性化されていないアルケンとイミンでのイミノ-エン反応は文献報告が少なく、合成上価値のあるホモアリルアミン合成が可能なことから学術上一定の価値があると考え、現在論文投稿に向け準備中である。本結果は当研究室で開発されたCp*Co錯体がLewis酸触媒としての機能することを示すものであり、その特性について知見を得られたことは今後の研究において役立つものと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は収率に改善の余地はあるものの、Cp配位子上に配向基を内包したロジウム、コバルト錯体の合成ルートを確立し、それらを用いてアルデヒドβ位のC(sp3)-H結合官能基化反応の開発を目指し、種々の反応系を探索した。しかし、ロジウム、コバルト両錯体で反応の進行を確認することはできなかった。そこで、C(sp3)-H結合官能基化反応に関する知見を得るため、Cp*Co錯体を用いたアリル位C(sp3)-H結合官能基化反応の開発を行うこととした。末端アルケンに対し10 mol %のコバルト錯体を用いて、イミンへの付加反応を検討したところ、目的のホモアリルアミンが良好な収率で得られることがわかった。官能基許容性に関してもおおむね良好であった。しかし、反応機構に関する知見を得るため対照実験を行ったところ、一般的に用いられるLewis酸で低収率ながら反応が進行したこと、またカチオン安定化能の高い基質の反応性が高いといったことから、本反応はC(sp3)-H官能基化反応ではなくコバルトのLewis酸性によるイミノ-エン反応であることが強く示唆された。本反応の検討において、Rh、Co錯体の特性についての知見は深まったものの、C(sp3)-H結合官能基化反応については反応の進行を確認するに至っていないことから、「やや遅れている」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、Cp*Co錯体を用いたアリル位C(sp3)-H結合官能基化反応を他の求電子剤や求核剤を用いて検討し、Cp*Co錯体でのC(sp3)-H結合官能基化反応の知見を深める。また、配向基を内包したCp配位子及びRh、Co錯体の合成においては収率が十分ではないため、その合成ルートを再検討し、収率の改善を目指す。
|