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2019 年度 実績報告書

オレキシンによる意欲の向上が全身炎症後の活動量の回復促進に果たす役割

研究課題

研究課題/領域番号 18J21114
研究機関筑波大学

研究代表者

内田 俊太郎  筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2021-03-31
キーワードオレキシン / 延髄
研究実績の概要

オレキシン受容体を発現する延髄縫線核のセロトニン神経が、全身炎症後のマウスの活動量の回復効果を担うと仮説を立てた。低濃度LPS投与によって全身炎症を誘導したマウスに対して、薬理遺伝学的手法により延髄縫線核のセロトニン神経をを人為的に活性化し、マウスの活動量を観察した。対照群のマウスと比較して、延髄縫線核セロトニン神経を活性化したマウスでは、オレキシン受容体作動薬を投与したような活動量の回復作用は見られなかった。オレキシンは延髄縫線核のみならず脳内の多彩な場所に作用することから、単一の領域だけではなく多くの領域を活性化することで全身炎症後の行動量の回復を担うと考えた。現段階までに得られた、オレキシン受容体作動薬が全身炎症後のマウスの活動量を回復させるというデータ、ならびに炎症性サイトカインの上昇を抑制するというデータを主軸に論文を投稿することにした。

全身炎症時のみならず、オレキシンが脳幹の神経核を介してどのように健常時の行動・情動を調節するのか、神経回路レベルでは明らかになっていないことが多い。申請者は上記実験と並行して、後天的なオレキシン神経の脱落によって生じる「ナルコレプシー」の主要な症状である情動脱力発作の神経回路を明らかにするための実験にも取り組んだ。ナルコレプシーモデルマウスを用い、橋外背側被蓋核のグルタミン酸作動性ニューロンのうち、延髄網様体内腹側部のグリシン作動性ニューロンに投射するニューロン群特異的に破傷風毒素を発現させて不活化したところ、情動脱力発作様行動が著明に抑制されることを見出した。さらに、これらの神経回路はレム睡眠時の筋脱力をも担い、その下流では脊髄前核の運動ニューロンや脳幹の運動神経核に投射していることを見出した。
オレキシン作動性ニューロンはポジティブな情動によって筋脱力が生じぬよう、これらの回路の上流に作用していると考えた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

延髄縫線核のセロトニン作動性ニューロンが、オレキシン作動性ニューロンの下流で全身炎症後の活動量を担うという仮説は我々の実験系では否定され、論文投稿はオレキシンの薬理作用に絞り、進めている。
一方で、オレキシン作動性ニューロンが支配する領域の下流に存在すると考えられる「橋外背側被蓋核のグルタミン酸作動性ニューロン→延髄腹内側のニューロン→眼球運動以外の体性運動ニューロン」という神経回路が、レム睡眠と情動脱力発作様行動の筋脱力に共通な神経回路であることを見出したことは大きな進捗と言える。この知見を国際誌に投稿し、現在査読に対して追加実験を重ねている。

今後の研究の推進方策

全身炎症後の活動量の回復については単一の回路で制御されているとは考えにくく、オレキシン受容体作動薬で見られた効果に絞り、論文を投稿する。
今後は、主にオレキシン作動性ニューロンによって制御されるマウスの行動の詳細な神経回路を明らかにしていく。
前年度までに明らかになった「橋外背側被蓋核のグルタミン酸作動性ニューロン→延髄腹内側のグリシン作動性ニューロン」の上流を狂犬病ウイルスベクターを用いて明らかにし、オレキシン作動性ニューロンがどの領域でこの回路を支配しているのか検討していきたい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] オレキシン受容体作動薬は全身炎症後に低下したマウスの活動量を改善する2019

    • 著者名/発表者名
      内田俊太郎
    • 学会等名
      第15回GPCR学会
  • [学会発表] Delineation of Neural circuits for Muscle Atonia during REM sleep2019

    • 著者名/発表者名
      内田俊太郎、征矢晋吾、櫻井武
    • 学会等名
      第42回日本神経科学大会

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公開日: 2021-01-27  

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