1.「低タンパク質適応」と腸内細菌叢の関係についての研究 2020年度は、SPFマウスがタンパク質欠乏の状態にある場合に腸内細菌叢がどのような応答を示すのかを調べた研究が学術誌のScientific Reportsに受理され、掲載された。残念ながら新型コロナウイルス感染症対策の影響で十分な動物実験を行うことが困難であったが、パプアニューギニア高地人と日本人由来の異なる腸内菌叢に低タンパク食が与える影響から、タンパク質栄養にかかわる腸内菌群とその代謝的な特徴について考察した。
2. 「肥満」と腸内細菌叢の関係についての研究 2020年度はこれらのサンプルの中から各村落で30サンプルを選出し、NGSによりシーケンスを行い、計90のメタゲノムリードを取得した。各リードからヒト由来の配列を除去し、アセンブルし、コンティグを構築した。各コンティグから遺伝子予測を行い、遺伝子カタログを作成した。その後、ラオスサンプルから作成した遺伝子カタログとpublicの遺伝子カタログであるIntegrated Gene Catalog (IGC)と結合し、遺伝子やタンパク質、代謝、シグナル伝達などの分子間ネットワークに関する情報を統合したデータベースであるKyoto Encyclopedia of Genes and Genomes (KEGG)へのanotationを行い、各サンプル中でどのような機能が促進、あるいは抑制されているかどうかを解析した。機能解析の結果、山岳部の農村Cでは酸化ストレスへの応答を示す機能発現が有意に低く、酸化ストレスが低いことが示唆された。今後、酸化ストレスを増悪あるいは抑制させる腸内細菌がいるかどうかをより詳細な解析を行うことで調べることを予定している。
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