研究課題/領域番号 |
18J21124
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
阪口 幸駿 同志社大学, 脳科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 左右半球差 / 半球間相互作用 / 記憶 / 行動柔軟性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ラット大脳半球の機能的左右差と半球間相互作用の実態を明らかにし、脳の機能的左右差の起源と意義の解明につなげることである。今年度は、予備実験として①損傷/電気刺激実験と②薬理実験を行い、さらに③電気生理学および④光遺伝学の実験系の構築を行った。①右海馬、左海馬、両側海馬を電気的に損傷させたラット、および各脳領域に刺激電極を埋め込んだラットを用い海馬依存的記憶課題(十字迷路試験、物体認識試験、自発的交替行動試験、場所嗜好性試験)を実施した(電気刺激群は課題中連続して刺激を受ける)。結果として、短期記憶には右海馬は促進的に関与するが左海馬は右海馬の機能低下を誘導して抑制的に関与すること、長期記憶には左右両方の海馬が促進的に関与するが右海馬は場合によっては左海馬の機能低下を誘導して抑制的にも関与し得ることが明らかとなった。②左右背外側線条体へカニューラを留置し、ドーパミンD2アゴニストおよびアンタゴニストを投与したラットを用い、この脳領域内のD2受容体陽性細胞(D2細胞)の行動柔軟性課題(Place/response test、Devaluation test)に対する貢献を評価した。結果としては、行動柔軟性の保持には右ではなく左背外側線条体内のD2細胞の活性化が重要であることが明らかとなった。③④実験系の確立を行った。①②で得られた成果は共に国内および国外の学会で発表され、現在論文の執筆中である。③④も順調に進められ、大きな問題や進捗の遅延なく次年度の計画へ引き継がれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当初の計画通りに順調に進行した。記憶課題と行動柔軟性課題に関してどちらも論文化可能な結果を得ており、さらに次年度に向けた新たな実験系の確立と予備実験も問題なく実行された。 これらの成果は本年度、国内・国外多数の学会で報告され、現在論文としてまとめている。
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今後の研究の推進方策 |
動物脳における、単一細胞レベルからの機能的半球差に関するエビデンスは未だに少ない。したがって、半球間相互作用の実態の解明にはまず、様々な脳領域における機能的半球差の実証が必須であり、これについては本年度実施された。次年度以降は本年度得られた成果を基に、光遺伝学的手法を用いて、半球間相互作用(特に、右脳→左脳もしくは右脳←左脳間の半球間抑制)が記憶や行動選択にどのようなメカニズムを伴ってどのように貢献するのかを探求する。
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