研究課題/領域番号 |
18J21247
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 洵 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 政党 / 初期議会 / 自由党 / 党議 / 日本 / 府県会 / 自由民権運動 |
研究実績の概要 |
本研究は、1890年の議会開設後の初期議会期において、議員たちが抱いていた理想の政党のあり方と、現実の議会での経験とが交錯する中で、徐々に議会制度にふさわしい政党のあり方が確立されていく過程を描くことを目的とする。修士論文では「党議」というキーワードを中心に分析したが、2018年度は3つの方向で研究を発展させた。 第1に、議会開設前の時期に活動した政党の再検討である。議会開設前に遡るのは、その後の日本の政党のあり方が、この時期の政党の存在様式によって規定されている部分があると考えるからである。まず、政党が国会開設運動から分化する瞬間である1880年の自由党準備会について検討して、政党に期待されていた役割を再考し、自由党の解党過程における議論を通じて、議会が存在しなかった時代の全国政党本部の機能を探った。また、大同団結運動の検討を通じて、議会開設を間近に控えた時期における政党の課題とそれに対する取り組みを分析した。第2に、帝国議会開設に先立って存在した府県会における党派対立の実態を探ることにより、自由党や改進党といった全国政党の枠組みのみによっては捉えることのできない、政党のもう一つの起源を解明しようと試みた。この課題については、まだ着手したばかりであるが、2018年度は青森県弘前市立図書館や東奥義塾、岩手県庁において史料調査を行った。第3に、明治期の政党の制度化・組織化過程の特質をより広い視点を持って把握するため、文献読解や演習への参加などを通じて、ヨーロッパ政治についても知見を深めた。以上の研究に際しては書籍購入費・旅費等を要した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事前の研究計画通り、議会開設前の時期の政党についての研究を進めながら、同時に、議会開設後の自由党について扱った修士論文の改訂作業を行っていることにより、議会開設前と後の政党とを一貫した視野の下で把握することが可能になりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、以下の2つの課題に引き続き取り組んでいく。第1に、議会開設前の政党についてさらに検討を深めていく。その際に、政党の機関紙や密偵報告書などを十分に活用していきたい。第2に府県会における党派の問題である。この問題については、様々な個別研究が蓄積されてきているものの、包括的に取り扱った本格的な研究はいまだに十分とはいえない。先行研究の読解を進めると同時に、県史や議会史の渉猟を通じて、府県会内の党派についての全体的傾向の把握と類型化の作業を行い、重点的研究の対象としていくつかの府県を選択した上で、地方の史料館を実際に訪れて史料調査に従事する。 また、新たに取り組む課題としては、議会開設前の政党観について新聞論説などを通じて分析を行っていきたい。これにより、議会開設前後の政党の動向が、アイデアの次元も含めてより立体的に把握できるようになる。
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