研究課題/領域番号 |
18J21307
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久我 一喜 九州大学, 総合理工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | CFD / 経気道暴露 / 経皮暴露 / 数値人体モデル |
研究実績の概要 |
これまで開発に取り組んできた人体呼吸器系を統合した数値人体モデルを,暴露予測の視点で更に高精度化する.室内環境中に存在する各種の汚染物質(ガス状ならびにエアロゾル状)を対象として,経気道暴露と経皮暴露に着目する.各々の暴露経路での人体影響を記述する生理的薬物動態(PBPK)モデルを開発,統合する.最終的に,計算流体力学CFDを基にした室内汚染物質濃度分布解析技術と数値人体モデルを統合することで,室内での放散,化学反応,吸着・脱着,移流・拡散を経て,経気道暴露・経皮暴露にて体内吸収されるまでを,連続且つ包括的に予測するための総合的な数値解析モデルを構築することを目的とする. 応用解析事例として電子タバコ由来の代表的な汚染物質であるホルムアルデヒド,アセトアルデヒドに着目し,電子煙草使用時の非定常呼吸サイクルを再現した上で,呼吸器系を介した暴露量評価を行い,ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドでの暴露量の違いを比較した.また,電子煙草の吐出空気中の残留汚染物質による室内空気汚染及び室内居住者への吸入暴露量を定量的に評価した.これまで進めてきた経気道暴露シミュレーションを高精度化するため,いままで気道内組織を気道粘膜+粘膜上皮,粘膜上皮下組織の2層モデルで表現してきたが,気道粘膜と粘膜上皮を二つに分け,3層モデルを作成した.さらに,対象汚染物質を増やし,各汚染物質での暴露量の差異を示すことを目的の一つとした.また,電子煙草使用時の吸入暴露量は喫煙サイクルの違いによって変化することが考えられるため,異なる二つの呼吸サイクルを作成し,解析を進めている.さらに,電子煙草の吐出空気中の残留汚染物質による室内空気汚染による室内居住者への曝露は吸入暴露だけでなく,局所的な経皮暴露を伴っていると考えられる.そのため,経気道暴露評価用モデル同様,経皮暴露評価用モデルを作成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では1年目で経気道暴露による人体影響を高精度に予測する数理モデルを開発し,CFD解析用の数値気道モデルと連成した解析として,電子タバコを対象とした経気道暴露シミュレーションに適応させることが目標としていた.実際には経気道暴露による汚染物質の吸収を予測する数理モデルの開発は順調に進んだ.さらに,CFD解析用の数値気道モデルとの連成においても高精度計算機の使用により,解析時間は当初予想していたよりも大幅に削減された.これにより,経気道内の汚染物質吸収量の予測に加え,電子タバコ使用者の呼出による室内環境への汚染物質の拡散,非喫煙者への2次暴露量予測まで進んでいる.さらに,経皮暴露量予測のための数理モデルも作成が進んでおり,当初の計画以上に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
現在は電子タバコの喫煙を経気道・経皮暴露量予測の解析応用事例として,吸入による汚染物質の吸収に加えて,喫煙者の呼出による室内環境への汚染物質の拡散,非喫煙者による吸入暴露や経皮暴露を連続して解析している.今後はシックビルディング症候群の原因となると考えられている二酸化炭素による長期的な暴露現象や人のくしゃみや咳などによって飛散する感染性の汚染物質の室内挙動,その暴露現象を新たな応用解析事例として挙げ,作成した経気道・経皮暴露モデルの適用を進めていく予定である.
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