採用第3年度目においては、第2年度目に見出した担持ニッケル触媒によるアルキルアレーンのベンジル位C(sp3)-H結合のホウ素化反応について、最適反応条件の確立、基質適用性の検討、触媒の詳細なキャラクタリゼーションなどを行った。析出沈殿法によってNi水酸化物をCeO2に担持した触媒 (Ni(OH)x/CeO2) を用いた場合に、ピナコールボラン (HBpin) をホウ素化剤とするアルキルアレーンのベンジル位C(sp3)-H結合のホウ素化反応が高選択的に進行した。第2級ベンジル位C(sp3)-H結合を有するヘプチルベンゼンをモデル基質に設定し、触媒量、反応温度、溶媒、HBpin等量などを検討し、最適反応条件を決定した。基質適用性の検討を行い、これまでに報告例が少ない比較的長いアルキル鎖を有するアルキルベンゼンやジフェニルメタン類の第2級ベンジル位C(sp3)-H結合に対して適用可能であることを見出した。また、第1級ベンジル位のC(sp3)-H結合を有するメチルアレーンを基質とした場合には、ホウ素化反応が2回進行したジホウ素化体を主生成物として得た。また、反応に伴ってH2ガスが生じていることを確認し、アクセプターレス脱水素型の反応となっていることが確かめられた。HBpinで処理した触媒のNiK端XAFSスペクトルのEXAFS領域の解析を行うことによって、生じたNi(0)種が担体上に非常に高分散な状態にあることを明らかにした。また、STEM-EDS分析によって担体上にNi種が非常に高分散な状態にあることを確認した。CeO2以外の担体を用いた場合や他の還元手法を用いた場合との比較を行うことで、CeO2担体が反応条件下におけるHBpinによるNi(II)水酸化物の還元を促進し、これが優れた活性と選択性を示す高分散なNi(0)種の形成に寄与することを明らかにした。
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