研究課題/領域番号 |
18J21346
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
利光 孝太 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | オルガノイド / がん / 個別化医療 |
研究実績の概要 |
近年,患者の遺伝学的背景に基づき治療法を最適化するテーラーメイド医療の実現が期待されているが,遺伝子変異や遺伝子の過剰発現 (バイオマーカー) に基づき選択できる抗がん剤の種類は未だ乏しい.本研究では,大腸がん・膵臓がん・胃がん患者由来のオルガノイド約200例を含む消化器がんオルガノイドライブラリーを用いて抗がん剤感受性を網羅的に評価し,取得済みの多階層オミクス情報との統合解析により抗がん剤感受性バイオマーカーを探索することを目的として研究を行なってきた. 昨年度までに,IGF-1とFGF-2による新規オルガノイド培養法 (Fujii et al. Cell Stem Cell 2019) を用いたハイスループット薬剤スクリーニング系を確立し,従来の培養法と比べてスクリーニング実験の精度指標であるZ’-factorの値が改善することを確認した.今年度は,大腸オルガノイド25例に対する66化合物の50%成長阻害濃度 (IC50) と,膵臓オルガノイド35例に対する11化合物のIC50の取得及び精度評価を完了し,多階層オミクス情報との統合解析を行なった.TP53変異オルガノイドはMDM2阻害剤に耐性を示し,EGF/MAPKシグナル上の遺伝子に変異を有するオルガノイドはEGF受容体阻害剤に耐性を示した.また,大腸がんにおけるパクリタキセル感受性バイオマーカーを同定し,バイオマーカー遺伝子のノックアウト及び遺伝子導入によりパクリタキセル感受性が変化することを確認した.さらに今年度は正常大腸オルガノイドの抗がん剤感受性を解析し,大腸がんオルガノイドの抗がん剤感受性と比較することで,大腸がん特異的な増殖抑制効果を示す化合物を同定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では消化器がんオルガノイドの抗がん剤感受性を網羅的に取得し,多階層オミクスデータとの統合解析により抗がん剤感受性予測のためのバイオマーカーを同定することを目的としている.本年度は大腸がん及び膵臓がんの抗がん剤感受性データの取得及び精度評価を完了した.大腸がんにおいて,抗がん剤感受性と多階層オミクス情報の統合解析により既知のものを含む複数のバイオマーカーを同定し,遺伝子改変実験によりその機能を確認した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに大腸がん及び膵臓がんの抗がん剤感受性データの取得を行い,大腸がんについては多階層オミクス情報との統合解析及び同定されたバイオマーカーの機能評価を完了した.最終年度は,公開されたデータセットとの比較解析により同定されたバイオマーカーの臨床応用可能性を検証する.また,大腸がんにおいて確立した手法を膵臓がんにも応用し,抗がん剤感受性予測モデルの確立とバイオマーカーの探索及び機能評価を行う.
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