研究実績の概要 |
社会的分配の意思決定と深く関連するリスク下の意思決定における認知・神経基盤を明らかにした共著論文を発表した (Ogawa, Ueshima, Inukai, & Kameda, 2018)。この論文では、自己利益のために行うリスク決定では最悪の結果が注目されるのに対して他者利益のために行うリスク決定では期待値が注目されることを、右側頭頭頂接合部における脳活動や、意思決定中の情報処理過程から明らかにした。 第三者的立場から行う分配の意思決定に関する2つの実験を実施した。1つめの実験からは、人々が熟慮することによって、恵まれない人に利益をもたらすこと(マキシミン分配)と平等性を追求すること(平等分配)を区別するようになる可能性が明らかになった。2つめの実験からは、他者との合意形成を経験した人々は、平等分配よりもマキシミン分配を支持するようになる傾向が示唆された。また、このような合意形成の経験から生じる分配選好の変化は、合意形成の過程で最も恵まれない人の利益が中心的な議題となることと関連している可能性が、合意形成時の発話を解析することによって明らかになった。以上の結果は、最も恵まれない人々に対するマキシミン的な配慮が、個人的に熟慮する場合と社会的相互作用場面の両方の場面において頑健であることを示唆している。現在、各実験について眼球運動計測を伴う実験やウェブ調査を行いさらなる追加的検討を進めている。 これらの研究成果の一部を、日本社会心理学会第59回大会、日本人間行動進化学会第11回大会(若手発表賞受賞)、日本行動経済学会第12回大会(行動経済学会ポスター報告奨励賞(一般部門)受賞)、第22回 実験社会科学カンファレンス(ポスター賞受賞)等で発表した。
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