研究実績の概要 |
昨年度に引き続き今年度は、speed-accuracy tradeoff状況(速さと正確さのトレードオフがある状況:SAT状況)で人がどのように社会情報を処理しているかを実験室実験により検証した。この実験では、参加者の眼球運動をアイトラッカー(Tobii Pro Spectrum)によって測定した。また、視線データを予測変量とする認知モデルによる分析を行うことで、ある参加者が任意の時点でどのような内的判断を持っているかをモデリングした。実験の結果、昨年度の実験と同様に、(i)2者状況では判断が拙速になること、(ii)社会情報とは独立に意思決定しつつも、50-50に近い重みづけをすることが多いこと、(iii)社会情報の良し悪しを判別できることがわかった。この実験結果は第12回日本人間行動進化学会で発表され、進化心理学・数理生物学の研究者の関心を集め、活発な議論が展開された(黒田・伊藤・大槻・亀田,2019)。また、この発表は同学会で若手研究者賞を受賞した。 この他にも、8月には3者状況における社会情報の処理過程を検証する実験を、12月には人々の多数決意思決定に対する選好を検証する実験を行った。これらの実験結果については現在データを分析している最中である。 また並行して、昨年度投稿した2本の論文について、それぞれEvolution and Human Behavior、Japanese Psychological Researchへの掲載が決定した(Kuroda & Kameda, 2019; Kuroda, Kamijo, & Kameda, in press.)。現在は、相互作用を通じた2者の知覚傾向の収束現象に関する論文を執筆している最中である。
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