2020年度は、特にアオモンイトトンボの青色とコシアキトンボの黄色に着目し、その色素の同定と、RNAseqによる色領域特異的な発現遺伝子群の網羅的な同定、およびそれらの候補遺伝子のRNAiによる機能阻害を実施した。その結果、トンボの青色や黄色の形成に関与する酵素や転写因子の多数の同定に成功し、現在論文化に向けて準備を進めている。 さらに、自身の確立した、トンボにおけるエレクトロポレーションを併用した遺伝子の機能解析法(Okude et al. 2017 Appl. Entomol. Zool.)について、さらなる改良を実施した。アオモンイトトンボやコシアキトンボにも適用可能であること、より安価なdsRNAも作用すること、変態の進行するステージ以前にRNAiを行う必要があることなどを見出し、ビデオプロトコルを含めた論文として発表した(Okude et al. 2021 J. Vis. Exp.)。 また、トンボの変態の進行過程はトンボの種間で異なるのかどうかを確かめるために、日本に生息するトンボ種の約1/4にあたる49種158個体の主に終齢幼虫期を毎日写真撮影し、延べ5000枚近い写真を基に、変態に伴う終齢幼虫の形態変化を詳細に追跡観察した。その結果、観察した全ての個体において、終齢幼虫期は翅の形態に基づいて3つの共通したステージに分類可能であることを明らかにし、論文を発表した(Okude et al. 2021 Sci. Rep.)。 そのほかにも、2019年度に実施したトンボの変態を制御する分子機構に関する研究についても、2020年度中に一通りデータを取得し終えたため、2021年度中の論文投稿を目指し、準備を進めている。
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