研究課題/領域番号 |
18J21594
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塚原 浩太郎 東京大学, 東京大学大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 選挙 / 政党組織 |
研究実績の概要 |
本年度においては、地方史料の収集を進めその分析に力を注いだ。和歌山県での地方紙の通読を通じて、昭和戦前から戦後にかけての当該地域の政党組織の展開過程や選挙運動の実態等について知見を深めた。 和歌山県では明治期以来強固な政友会の組織が形成されており、それらが比較的連続的に戦後の保守政党へと通じていた。他方でそうした地域に対して県の周縁的な地域では、政友会への対抗を掲げつつ憲政会―民政党系の組織が形作られていったことを把握した。また全国紙の本社が集中する大阪との近接ゆえに一県全域にわたるような地方メディアが育ちにくく、県内の中心―周縁に即応するよう地方紙が形成され、県内の政党論を規定していたことを把握した。 また和歌山県立文書館の県会議事録からは、地域的な対立意識による土木費、特に道路修繕費の配分がどのような偏りを持ったかについて知見を深めた。またそうした偏りが選挙運動や投票の場面において強い結束の意識を生んでいることを、複数の地方名士の回顧録から把握した。引き続きこれらが明治・大正期の地方利益論とどのようなつながりを持ったものだったのかについて検討を進めている。 これらと並行して他府県での調査も進み、比較研究の素地が整いつつある。特に静岡県での政党組織と選挙過程は、旧国などの地域的な枠組みが強く影響する点などで共通することが認められる。他方で中心―周縁的な意識が比較的に強く働かない点や、和歌山県ほどには政友会の一強的な体制が続かないことなどで明確な差異も認められており、こうした違いを生み出す要因について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
和歌山県内各市町村での史料収集が概ね順調に進んでいる。ただ規模の小さな自治体も比較的多いため、資料施設は必ずしも充実しているとは言えず、研究の進展が直ちに見込まれるわけではない。その中でも、地方紙の通読や県会議事録の検討などが進められている。また他府県での史料収集も進んでいることから、各府県の政党組織や選挙過程の特殊性や普遍性の把握が進展しつつある。特に静岡県での史料収集は、県内各市町村において概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
政党組織や選挙過程の地域比較を行うため、他府県での史料収集を進めその異同について考察を深めることとしたい。また、他府県会での利益配分についてその政治過程を把握するため、県議会事務局などへ問い合わせた上で議事録等の閲覧を進めたい。併せて、昭和期以降の県会での議論が、明治・大正期以来続いてきた地方利益論の系譜の上でどのように位置づけられるのか、検討を進めたい。 またそうした利益配分が地域的な結束意識を強めることを把握したが、他方で一部の地域では配分された利益を巡って地域内の対立が先鋭化する例も見られた。同様の地方利益が配分されながら地域によってその効果が異なることについて、その要因を考えたい。
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