本研究課題は、有孔虫の古水温代替指標の高精度化を目指し、サンゴ礁に適用可能な新たなプロキシとして大型底生有孔虫の古水温代替指標の開発と、現生有孔虫試料の群集・鉛直分布等の解明の実践に取り組んでいる。 (1)セディメントトラップ試料中の浮遊性有孔虫による水温・塩分の鉛直分布の復元 ベンガル湾西部で採取されたセディメントトラップ試料(1989年-1996年)を用い、①浮遊性有孔虫の群集解析(国際誌に投稿、改訂中)、②浮遊性有孔虫の殻の石灰化深度を導出するため、殻の酸素同位体比の測定を行った。②に関し、主要な種のうち特に重要な3種の炭酸塩殻は、各々混合層、温度躍層、それら2層の間の水温を反映することが確認された。また、①②の結果から、上記3種のフラックスの季節性の影響は堆積物中では打ち消され、それらの殻から水温などの年平均値を推定可能であることが明らかになった。これは堆積物試料を用いた先行研究で利用されてきた仮定であるが、本研究で現生試料のデータから改めて裏付ける結果となった。 (2) 大型底生有孔虫の野外採取個体の殻の化学組成 大型底生有孔虫の野外採取個体として、3月、9月採取個体を加え、それらの殻のMg/Caを測定した。Mg/Caの測定結果に先行研究で報告済みのMg/Ca―温度換算式を適用した復元温度と、採取地点の平均水温との関係から、LBFの殻には、各種の生育期間に経験した水温の平均値が反映されうることが示唆された。また、大型底生有孔虫の古水温プロキシとしての実用性を評価するため、沖縄の海底洞窟から採取された堆積物コア中の化石大型底生有孔虫のMg/Caを測定し、測定結果にMg/Ca―温度換算式を適用した。復元温度のデータは近傍の堆積物コアから得られた古水温復元データ(先行研究)と整合的であった。以上の結果をまとめ、現在論文原稿を準備中である。
|