研究課題
本研究は光を用いた大規模な任意の量子計算に向けて、「時間領域多重2次元クラスター状態の生成及び時間領域一方向量子計算の実現」を研究テーマとする。本研究が用いる手法は一方向量子計算という手法で、量子計算のリソースとなる「時間領域多重2次元クラスター状態」の生成及びこの状態に対する測定という2つの要素からできる量子計算の様式である。今年度の主な成果としては上述した二つの要素の一つである「時間領域多重2次元クラスター状態」の生成に成功したことである。この2次元クラスター状態と呼ばれるものは様々なアプローチや物理系で世界中で生成が挑まれているものの、我々の方式による生成が世界で初めて成功した実験である。本研究で用いられている手法は他のアプローチと大きく異なります。特に最も大きい違いはシステムのコヒーレンスタイムにリミットされず、状態を連続的に任意のサイズで作ることができる。また、今回は5入出力の量子計算ができる状態を生成したが、現在の最先端の既存の技術を用いれば、10の4乗の入力数の量子計算が射程圏内になっており、我々の方式が他のアプローチと比べて大規模な量子計算に適していることを強く示している。この性質は実用性のある量子計算の実現には不可欠な、光の特性を用いたからこそできるものになっている。今回の実験の成果で本来情報を送ることがメインだと思われる光が量子情報処理にも適していることが強く示され、光を用いた量子情報処理及び量子情報処理の物理系の研究のパラダイムシフトを促進することが期待される。現在は上記の成果を論文にまとめ、論文の投稿を行っている。また、国際学会での発表も予定されている。
1: 当初の計画以上に進展している
先ずは、当初予定していた計画を全部実行することができている。また、それに加えて科研費を用いて一方向量子計算の理論の創始者のところに短期留学をすることができて、それによって今自分が実験の方で研究している分野の理論の最先端を体験することとともに理論家とのつながりを作ることができた。また、元々翌年度に論文を執筆し、投稿する予定だったが、それよりも早く執筆して投稿することができたので、当初の計画以上に研究が進んだ。
今回の2次元クラスター状態の生成に成功したため、今後の研究の方向性が二つ考えられる。一つ目は今回生成した量子的なリソースを用いるための基本的な技術の開発である。もう一つは外乱などによる誤りを直すことのできる「誤り訂正可能な量子計算」の実現に向けて、2次元クラスターを更に拡張して、「3次元クラスター」を生成する実験を行う。今後の研究の方針としてはこの二つの方向性を平行で行っていくことになります。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Proc. SPIE
巻: 10771 ページ: 1-9
https://doi.org/10.1117/12.2320476