研究課題
本研究では実際に応用可能な光量子コンピューターの実現に向けて「時間領域多重2次元クラスター状態の生成及び時間領域一方向量子計算の実現」を研究テーマとする。それのために二つの要素が必要である。一つ目はその計算のリソース、言い換えれば量子計算のプラットフォームに対応する「2次元クラスター状態」である。二つ目はその2次元クラスター状態を利用するための「時間領域基底切り替えのホモダイン測定」が必要である。この二つの要素がそろえば、大規模光量子計算への実現が一気に現実味を帯びて、必要な基礎技術がそろったといっても過言ではない。前年度の成果として、時間領域多重の手法を用い、そのリソース状態である「2次元クラスター状態」の生成に世界で初めて成功したと報告した。今年のではまずはその成果を論文に書き上げて発表した【W. Asavanant et al., Science 366, 373 (2019). 】これによって量子計算の担い手の様々な物理系の中で発展が遅れてきた光量子コンピューターの強さ及び実現可能性を示せ、量子コンピューター業界に大きく影響を与えた。また、上述した2つ目の要素「時間領域測定基底切り替えのホモダイン測定」に関しても、今年度で大きな成果を挙げた。その測定規定切り替えに必要な電子回路を開発し、それを時間領域多重1次元クラスター状態と組み合わせ、時間領域で作用する量子操作の実現をした。今までの時間領域光量子コンピューターの研究では主にそのリソースの生成に画期的なアイディアを用いて、他の物理系より大規模化に関する優位性を実験的に示してきたが、今回では初めてその優位性を利用し実際量子計算に使えることを実験的に示した。この成果は光量子コンピューターの大きな進展である。現在はこの実験結果を論文にまとめ上げるとともに、国際学会での発表も予定されている。
1: 当初の計画以上に進展している
当初、本研究のメインな部分である「2次元クラスター状態の生成」及び「それを利用した量子計算」両方をすでに実験的に成功し、論文や国際学会での発表も行ったため。
次のステップとしては、本研究で実現した原理実証の実験をベースに商品よりの光量子コンピューターの開発を行うとともに、さらに「誤り訂正可能性」を付与するために、現在2次元クラスター状態をさらに拡張し、「3次元クラスったー状態」を生成する手法の研究も行っている。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
Science
巻: 366 ページ: 373~376
10.1126/science.aay2645