研究課題/領域番号 |
18J21746
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平本 絵美莉 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | AIM / IgM / 構造解析 |
研究実績の概要 |
AIMは肝臓のクッパー細胞などの組織マクロファージが産生する分子量約40kDaの血中タンパク質であり、AKIをはじめとしたさまざまな疾患の治癒に寄与している。AIMは通常血中でIgM五量体と結合し、不活性化されているが、AKI発症時にはAIMはIgM五量体から解離した活性型となり、AKIからの回復に寄与する。そこで、より効率的にAIMをIgM五量体から解離させ活性型とすることで速やかなAKIからの回復が促され、CKD発症が抑制されるのではないかと考えた。 まずAIMをIgMから解離させる“AIM活性化分子”を探索すべく、電子顕微鏡による構造解析によってAIMとIgMの結合様式を同定することを目標とした。IgM五量体は各単量体同士、およびJ鎖と呼ばれるポリペプチド鎖がジスルフィド結合によって結合し血中で五量体を形成して存在している。これまでIgM五量体はシンメトリックな正五角形をしていると信じられてきており、教科書にもそのように記載されている。今回、負染色したIgM分子の電子顕微鏡による観察により、これまで正五角形をしていると信じられてきたIgM五量体が、実は正五角形ではなく六量体から一つの単量体が抜けたような大きな空間を一つ有する歪な五角形であることを発見した。これは、これまで50年間以上免疫学の教科書に記載されていたIgM五量体の構造を覆す成果である。さらに、負染色したAIM-IgM複合体の観察により、AIMがIgM五量体の1カ所のギャップにちょうどはまり込むように結合している姿を電子顕微鏡で捉えることに成功し、AIMとIgMの結合はジスルフィド結合と電荷相互作用によるものだと明らかとなった。この研究成果は、AIMをIgMから解離させることでAKIなど腎疾患をはじめとしたさまざまな疾患治癒を目指す新規創薬開発に大きく貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
AKI治癒において治癒においてAIMがIgMから解離することが非常に重要である一方で、AIMとIgMの結合様式は不明であった。しかし、AIMとIgMの結合様式が明らかになったことにより、AIMをIgMから解離させる分子の探索およびそれを用いた新規創薬開発が可能となった。 また、CKD発症モデルについても野生型マウスとAIM欠損型マウスでの比較を行い、AIMの有無による解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、クライオ電子顕微鏡による三次元構造解析により、より詳細なAIMとIgMの結合様式を明らかにするとともに、AIMをIgMから解離させる“AIM活性化分子”の同定を進める。また引き続き、CKD発症モデルマウスを用いて野生型およびAIM欠損型マウスの比較を行うことで、CKDの発症、治癒に対するAIMの寄与について検討する。さらに組み換えAIMタンパク質を投与、あるいはAIM活性化分子を投与することで、活性型AIMのCKD予防、治療効果を検討する。組み換えAIMタンパク質の投与量や回数、時期は適宜調整し最適化する。
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