研究課題/領域番号 |
18J21758
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
猪熊 建登 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 流体力学 / 衝撃波 / 乱流 / ソニックブーム / 風洞 |
研究実績の概要 |
本年度は、格子乱流/衝撃波干渉および円柱後流/衝撃波干渉に関する風洞実験と、乱流による衝撃波面崩壊に関する理論研究を行った。 格子乱流/衝撃波干渉実験では、衝撃波の影響を受けた乱流の速度特性変化を調査した。本実験では、風洞内に生成した格子乱流と衝撃波管の開放端から放った球面衝撃波を干渉させ、干渉場における格子乱流の主流方向速度を風洞のスパン方向に並べられた3本の熱線プローブで多点同時計測した。この同時計測を複数回繰り返して統計解析を行った結果、干渉後に格子乱流の積分スケールが衝撃波の法線方向に減少、接線方向に増加することがわかり、乱流渦が非等方的になることを確認した。また、乱流の影響を受け、衝撃波が各熱線プローブに到達する時間に差が生じることがわかり、衝撃波面が局所的に変形していることを示唆する結果を得た。 円柱後流/衝撃波干渉実験では、円柱後流の速度と衝撃波過剰圧を熱線プローブと圧力センサを用いて同時計測し、衝撃波が乱流領域を伝播する距離が、過剰圧変化に与える影響を調査した。この結果、衝撃波過剰圧の平均値は円柱後流の速度欠損が大きくなるにつれて減少することがわかり、過剰圧の変動係数は、円柱後流の速度変動の標準偏差が同じとき、円柱後流との干渉距離が増えるに従って増加することがわかった。また、円柱後流の速度変動と衝撃波の過剰圧変動の相関係数は、干渉距離の増加に伴って減少し、速度変動の増加に伴って増加することがわかり、円柱後流がもたらす速度分布の非一様性が衝撃波特性に与える影響を確認した。 乱流の速度変動の影響による衝撃波面の変形に関する理論モデルも構築し、衝撃波面の崩壊現象を考察した。これにより、数値計算による先行研究で提唱されている、乱流と衝撃波の相対強度と衝撃波面の崩壊の関係を導くことができ、衝撃波・乱流干渉現象における衝撃波面の幾何学的な変形の影響を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
格子乱流/衝撃波干渉実験では、風洞装置内部で複数の熱線プローブを用いた速度多点計測を行うことを考案し、干渉による乱流の渦スケールの変化や、衝撃波面の幾何学的な特性変化についてなど、衝撃波/乱流干渉の統計的特性について重要な結果を得ることができた。また、円柱後流/衝撃波干渉実験においては、風洞内に部分的に導入した乱流に衝撃波を干渉させることによって、当初の目的であった、乱流の速度場の非一様性と過剰圧特性変化の詳細な関係を調査することに成功した。さらに、乱流の影響を受けた衝撃波の変形に関する理論モデルを考えて先行研究の数値計算や実験結果と比較し、衝撃波/乱流干渉現象のメカニズム解明に向けた手がかりを得ることができた。このように衝撃波/乱流干渉に関する様々な実験を考案・実行し、理論モデルと合わせて考察することで、現象の理解に向けた重要な知見を多く得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
乱流の速度・温度特性が衝撃波に与える影響に関する知見を得ることを目指し、加熱円柱後流と衝撃波の干渉実験を行う。具体的には、衝撃波の過剰圧平均値や変動係数が乱流の速度・温度の平均値や変動にどのように依存して変化するか調査し、乱流の速度・温度と干渉する衝撃波の強度が、衝撃波過剰圧の統計的特性に及ぼす影響を解明する。また、衝撃波の強度に関する条件を幅広く設定することが可能な衝撃波発生装置を新たに製作する。新しい衝撃波発生装置では、これまで用いてきた衝撃波発生装置よりも、駆動気体と非駆動気体の隔膜除去を素早くすることや、衝撃波管内の衝撃波の減衰を小さく抑えることを目指す。この装置を用いて、これまでの衝撃波発生装置では扱えなかった強い衝撃波を乱流に干渉させる実験を行い、より幅広い衝撃波強度と乱流強度の範囲での衝撃波/乱流干渉に関するデータを得ることを目標とする。
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